赤ちゃんの顔認識能力とは?発達の観点から
生まれたばかりの新生児でも、人の顔に注目しますね。
新生児を含めた、乳児はどのように人の顔を見ているのでしょう?乳児が好む顔というのは、あるのでしょうか?それとも、なんとなく、目の前に人の顔があるからみているのでしょうか。
生後8か月間で、乳児の顔を認識する能力は大きく育ち、より顔らしい特徴をもつ図形や顔らしい動きに敏感になっていきます。
このように敏感になっていく育ちは、いつごろから、どのような特徴に対して敏感になっていくのか、ご紹介します。
生後0~3か月の顔を認識する能力
生まれたばかりの新生児でも、人の顔を見ますね。
このことは、新生児を含めた乳児を対象とした、実験において明らかになったことです。いくつかの図形の中から、乳児が好みやすい図形を選んだところ、
その中に人の顔の図形含まれていたのです。
ここから、乳児が顔図形を好むことが発見され、つづいて、生後9分の乳児でさえ、顔らしい図形に注目することがわかったのです。
顔らしい図形とは、目や鼻などの配置がランダムのものではなく、目や鼻などが定位置にあるものをいいます。
しかし、乳児が顔の図形に注目するからといって、それを人の顔だと認識して見ているとはいえないのではないかという疑問が出てきますね。
乳児が顔を見るときに、それが顔であることを知ったうえで、見ているわけではないかもしれないわけです。
言い換えると、乳児の視覚は、人の顔がもついくつかの特徴に自動的に反応し、それに目を向けているだけかもしれないのです。
トップヘビーとは
乳児が好んで目を向けるものの特徴のひとつに、トップヘビーというものがあります。
これは、輪郭で囲まれた領域のなかに、複数の要素があるときに、その要素が上方に多く集まっているものをトップヘビー図形といいます。
乳児は、人の顔でなくても、このトップヘビー図形を好んで見ることがわかっています。
人の顔は、二つの目の下に鼻、口がそれぞれ1つずつあり、真ん中についている鼻を目印にすると、上半分んは要素が二つあるのに対し、下半分には一つしかなく、そのため、乳児の視覚は、トップヘビー図形を好んで見た結果、人の顔に目が向いているという可能性もありますね。
しかし、トップヘビー図形だけで顔を認識しているわけではなさそう
乳児がトップヘビー図形を好んでいることは紹介しましたが、人の顔がもっている特徴は、トップヘビー図形ということのほかに、コントラスト極性があることがあげられます。
人の顔の白黒写真を思い浮かべてみてください。
目や口の近くは黒っぽく、皮膚の色よりも暗い色になっているでしょう。
これは、日常生活で見る人の顔は、上から光があたっていて、凹凸になっている目や口の周りに影ができるからです(この凹凸は、すべての人の共通なことなので、皮膚の色を問わず、同様の明暗関係があります)。
しかし、照明を顔の下からあてて撮影をすると、目と皮膚の明暗関係が逆転し、目の部分が明るく、皮膚が黒く映ります。
このように、コントラスト極性が逆転すると、大人では顔を認識することが難しくなります。これは乳児でも同じようで、同じ人物の顔であっても、上から照明があたって通常のコントラスト極性が保たれた写真のほうを、下から照明をあてられた写真よりも好んで見るようです。
また、顔全体ではなく、目の部分のみコントラスト極性を逆転しても、同様に顔の認識が難しくなることがわかっています。
人の目は、他の霊長類とは異なり、白目の部分が白く脱色しているため、目の真ん中の部分が暗く、そのまわりが明るくなるという特徴的なコントラストを備えています。
トップヘビー図形をさまざまなコントラスト極性を加えて、乳児に見せたところ、部分的に正しいコントラスト極性をつけたものを、乳児が好んだという結果が出ました。
このことから、乳児はトップヘビー図形を好んでいるというだけではなく、人の顔や目に特徴的なコントラスト極性が保たれていることが必要であることがわかっています。
乳児は、大人と比べて視力がずっと悪いため、細かい特徴よりも大きな、粗い特徴がよく見えていることもわかっているので、このことと合わせて、乳児はトップヘビー図形とコントラスト極性の組み合わせで、人の顔を見ていると考えられています。