赤ちゃんに楽しい音楽を聴かせることで脳が成長するってホント?
赤ちゃんが音楽をどのように受け止めているのかという疑問について考えていきたいと思います。
幼い子どもたちが、赤ちゃんのころから音楽に注意を向け、音楽的表現を楽しむということは、経験的にはよく知られていますね。
例えば、赤ちゃんに向かって、大人が歌ったり、小さな鈴を鳴らしたり、音楽CDを聞かせたりすると、とてもうれしそうに笑顔で、こちらをみます。
また、世界のどの文化にも、子守唄や遊び歌などの子どもに聞かせるための歌があるといわれています。音楽は、赤ちゃんと関わるときにいろいろなお手伝いをしてくれますね。
音楽は、音の高さ、拍で刻まれるリズム、速度、強弱といった多くの要素で構成されています。このような音楽の個々の要素について、赤ちゃんは高い感受性をもっています。
音の高さとリズムは音楽の2大要素
特に、音の高さとリズムは、互いに組み合わさって、メロディーをつくりだします。音の高さとリズムは音楽の2大要素といわれますが、赤ちゃんは早い時期から、この音の高さとリズムを知覚していることがわかっています。
また、乳児は音の高さだけでなく、高さの違う複数の音が同時に鳴ったときの響きを感じ取ることもわかっています。
ここでは、濁っていない、きれいなハーモニー(協和音)と、濁った、きたないハーモニー(不協和音)との比較を交えて、ご紹介します。
ハーモニーが赤ちゃんに与える影響や効果とは
きれいなハーモニー(協和音)と、きたないハーモニー(不協和音)を交互にスピーカーから流し、その際に乳児の行動に変化がみられるのかをみた研究では、きれいなハーモニー(協和音)が流れているときに、赤ちゃんがより長くスピーカーに注目するということがわかっています。
また、きたないハーモニー(不協和音)がスピーカーから流れてきたときには、手足の動きが多く、赤ちゃんが苛立っていることがわかっています。
このようなことから、赤ちゃんは、きれいなハーモニー(協和音)を好む傾向があることがわかりますね。
日ごろ、園で歌遊びや、楽器遊びなど音楽活動を取り入れることはよくあるかとおもいますが、できれば、きれいなハーモニー(協和音)を乳児に聞かせたいですね♪
音楽は、音の高さ、拍で刻まれるリズム、速度、強弱といった多くの要素で構成されています。このような音楽の個々の要素について、乳児は高い感受性をもっていますといわれています。
音楽のリズムが赤ちゃんに与える影響や効果とは
音楽のリズムについて、赤ちゃんがどのように受け止めているのかということをご紹介します。
音楽のリズムの構造について、赤ちゃんは生まれながらにして受け止める力をもっていることがわかっています。
生後2~5日の生まれたばかりの赤ちゃんに対して、ポップミュージックなどでよく使われるエイトビートのリズム演奏を聞かせて、脳波計を使って、脳内の動きを観察したところ、規則的でない、拍が足りないリズムになると、特有の反応をしていることがわかりました。
このことから、赤ちゃん、それも生まれて間もない赤ちゃんのときから拍の構造、リズムを知覚する機能を備えていることがわかっています。
拍を知覚することは、手拍子やダンスのような音楽に合わせた身体的動きを可能にします。
赤ちゃんがあたかも音楽に合わせるように、手や足を動かすことはよく知られていますが、乳児は音楽に合わせて体を動かしているのかどうかという疑問が出てきますね。
音楽がなくても、赤ちゃんは手や足を動かすこともありますよね。
この疑問に対して、赤ちゃんは、音楽を聞くと、体を周期的に動かしてリズミカルな運動をより多く行うことがわかっています。
さらに、テンポの速い音楽をきくと、運動の速度がある程度、速くなります。
このことから、赤ちゃんは音楽を単に受動的に聞いているだけでなく、音楽に合わせて、能動的に体を動っているということがわかりますね。
また、音楽に合わせて体を動かすことで、赤ちゃんの拍の感覚に影響を与えることもわかっています。
このことから、リズムと体の動きが密接に関係しているといえるでしょう。
園の活動の中でも、例えば歌を聞かせるときに、「1,2,3,4」と拍を声に出さなくとも、心の中でカウントしながら、拍を意識していきたいですね。
モーツァルトを聴かせると頭がよくなる?
赤ちゃんにモーツァルトが作曲した音楽を聞かせると、頭がよくなるという話を耳にしたことのある人は多いのではないでしょうか?
俗にモーツァルト効果と呼ばれていますが、この話は1993年にアメリカの学術雑誌に掲載された論文によるものだと「言われています」。
「言われています」というのも、この雑誌に掲載されたものは、大学生にモーツァルトのピアノソナタを10分間聴かせたあとに空間認識能力テストを行うと、何も聴かなかった場合やリラクゼーションのCDを聴いた場合と比べて成績がよくなり、またこの効果は10~15分後には消失するという内容だからです。
また、どのような音楽がこの効果を生み出すのか、また、音楽が知能全般の向上にも寄与するのかは今後の研究課題であるとまとめられています。
この研究は、もともと大学生を対象としたものであったのにも関わらず、いつのまにか、「赤ちゃんにモーツァルトが作曲した音楽を聞かせると、頭がよくなる」と解釈がすり替わり、メディアを通じて次第に一般に広く知られるようになったのです。
しかし、これまでのところ、乳児の知的発達についてモーツァルトを含めたクラシック音楽が成長を促進するような効果を与えるという、直接的な研究結果は得られていません。
先にご紹介した、大学生を対象として研究結果ですら、のちに他の研究者によって再現できる場合と、再現できない場合とがあるとの指摘がなされ、1999年には、モーツァルトの音楽を聴くことが成人の空間認識能力を高めるという証拠は得られないという結論にまとめられています。ただし、モーツァルトの音楽に限らず、明るく陽気な音楽や自分の好みの音楽、朗読を聴くことで空間認識能力が上がるという研究結果は報告されています。
以上のことをまとめると、乳児にモーツァルトを聴かせると頭が必ずよくなるというわけではありませんが、かといって決して悪い影響も与えないというところでしょうか。
モーツァルトに限らず、生活のなかで、さまざまな音楽を聴かせるというのが、よいのかもしれませんね。