発達障害の子供も指導を繰り返すことで身辺自立ができるようになっていきます
排泄や着替えなど、身の回りのことが自分でできるようになる時期は、個人差が大きいといわれています。
しかし、だいたいの子は4歳児のうちに生活に必要なことがひととおりできるようになります。
成長していくうちに、「自分で」という意識が芽生えるので、大人の手を借りずにできるよう、繰り返し連取することで、できるようになっていきます。
しかし、発達障害の子どもの場合、この「自分で」という意識が芽生えにくいことが多く、まわりの大人が手を貸しているうちは、いつまでたっても自分でやろうとしない傾向があります。
障害の程度にもよりますが、大人の言葉かけに応じたり、自分で排泄や着替えなどができるだけの身体能力がそなわってきたら、少しずつ身辺自立に取り組ませていくことが大切です。
まずは、「靴をはこうね」など、目的を意識させるような言葉かけをしましょう。
また、周囲への関心が薄い発達障害の子どもは「恥ずかしい」という意識が生じにくいこともあります。
その場合は、「恥ずかしいから自分でやろうね」など、まわりを意識させるような言葉をかけて、「自分で」やるという意欲がもてるよう働きかけていきましょう。
なお、このページでは、発達障害の子どもとは、知的障害がなく、肢体不自由のない発達障害の子どもをいいます。
動作を体で覚えさせていく
注意力が足りなかったり、手順やルールを理解しにくい発達障害の子どもに、身の回りのことを教えていくには、大事なことが3つあります。
1つめは、頭ではなく、体で覚えていくように働きかけることです。
この体で覚える記憶のことを「手続き記憶」といいます。何度も同じ動作を繰り返すと、その動作をつかさどる脳の部分に刻み込まれ、長期間忘れません。
知的障害や自閉症などでは、言葉の発達に問題があったとしても、動作に支障がなければ、体で覚えていくことができます。
ですから、この「手続き記憶」を意識して、何度も同じ動作を体験させていくことが、身辺自立に向けての大切な一歩となるのです。
子どもに動作を教える際に、注意したいのは、大人がしてあげる動作と子ども自身がする動作の違いです。
例えば、靴をはく場合、大人がはかせるときは子どもの足を持って固定し、靴のほうを足にはめます。しかし、子ども自身がはくときは、靴を手で固定して足のほうを突っ込んではきます。
このような違いをふまえ、自分でやれる方法を教えていきましょう。
そのためには、保育者自身が、普段何気なくしている動作を意識してとらえ、どう伝えたらよいかを考えていくことが大切です。
2つめに大切なことは、課程との連携を強化することです。
園と家庭とで教え方が少しでも違うと、発達障害の子どもは混乱を起こしやすくなります。
保育者同士も連携して、できるだけいつも同じやりかたで教えられるように配慮しましょう。
最後に、少しでも進歩がみられたり、がんばったときにはきちんとほめてあげてください。
少しずつできるようになることをともに喜びながら、根気強く取り組んでいきましょう。
対応事例1:着替えができない子どもへの指導
もうすぐ4歳になるAくんですが、自分で靴をはいたり、着替えをすることができません。
「先生と一緒にやってみよう」と声をかけても、興味がないのでプイっと横を向いてしまい、やってもらうのを待っているようです。・・・このような発達障害の子どもには、どのように対応したらよいのでしょうか。
「自分でやりたい」という意識の弱い子どもには、その子なりの目的をもたせることと、やりやすくなる工夫をすることが大切です。
例えば「靴をはいて外に遊びにいこう」と具体的な目的を示す言葉かけをして、最初は保育者が持っている靴に自分で足を入れられたら、大成功!というように、本人がやる部分を加減します。手指の動きが弱ければ操作しやすい工夫をし、手順がわからなければその都度教えていきます。
動かし方がわからないようすなら、「足の指をぎゅっとすぼめれば靴がはきやすくなる」ということを、実際に体を動かして教えることも必要です。
このような工夫が子どもの状態とかみ合うと、少しずつ自分でやろうという意欲が生まれてくるでしょう。
対応事例2:偏食が強い発達障害の子どもは、どう対応する?
とにかく偏食が強いBちゃんは、初めてみるメニューはいっさい口にしないし、嫌いなものが出てくるとおなかがすいても絶対に食べません。
無理に食べさせても・・・と許してしまうことが多いのですが、どうしたらよいのでしょうか?
食べ物の好き嫌いは、幼児期には多いものですが、自閉的な子どもの場合は、とくに偏食が強い場合があります。
なかには、食べたことのない食べ物を非常に警戒し、強く拒絶することも。そういう子には、例えば食べ物を細かく刻み、「(嫌いなものを)食べたら、好きなものをあげるよ」言いながら食べられるものを増やしていきましょう。
この「○○したら、■■できる」というルールは、一般的には2歳前後から理解できるようになります。
このルールに従えるようになると、食事の場面だけでなく、順番を守ったり、友達と遊ぶ際にも相手に合わせることができるようになります。
そういう意味でも、苦手なものをがんばって克服する体験を積ませ、社会に順応できるようにしていきたいですね。
対応事例3:おむつがなかなか取れない子どもには、どう対応する?
先日6歳になったCちゃんは、あまりトイレに行きたがらず、いまだにときどきおもらしをしてしまうので、園ではおむつをつけています。
もうすぐ卒園なのですが、このままでいいのだろうか・・・。トイレの排泄は、身体的な発達のほかに、排尿をコントロールする神経系の発達や、「排泄はトイレでするもの」「そこまで我慢をしなければならない」ということを認知し、理解する力が関係してきます。
Cちゃんの場合、ときどきおもらしをしてしまうということですから、ある程度コントロールする力はあるのでしょう。
オムツに慣れてしまうと、ますますトイレに行かなくなります。大変かもしれませんが、園で多少失敗をしてもパンツですごさせ、根気強くトイレトレーニングを続けるほうがよいでしょう。
また、トイレを嫌がる子どものなかには、「トイレが怖い」「便座が冷たくていや」と言う子も。トイレは明るく楽しい雰囲気にし、便座にカバーをつけるなどの工夫をしてみましょう。
トイレトレーニングは家庭との連携が第一です。保護者とも相談して具体的な目標を共有していきましょう。