保護者のクレームで鬱になる前に!デリケートな話題の対策とは?
伝えなくてはならない話を保護者にしなくてはならないとき、その伝え方に悩むことも多いですね。保育をするなかで、切り出し方や伝え方は難しいと感じる話題として、「発達の気がかり」「保育者が見ていないときのけが」「保護者に改善してほしいこと」が挙げられますが、そんな話を上手に伝えるためのポイントについて、保護者のタイプを考えながらご紹介します。
☆クレーマータイプ
感情的になりやすく激しく自己主張するタイプ
☆落ち込みタイプ
物事をネガティブに、かつ深刻に考えすぎるタイプ
☆無関心タイプ
子どもへの関心が薄く、大人の生活優先タイプ
発達の気がかりがある場合
「最近ちょっとようすがおかしい」といった子どもたちの変化や、障害の可能性が感じられるような発達の気がかりなどは、保育者から告げられる話として、保護者にとってどれも深刻な内容です。保護者の立場に自身を置き換え、言葉とタイミングを慎重に選んで話を切り出すことが大切です。
そして、問題を保護者に投げかけて終わりにせず、「園と家庭で連携して見守っていきましょう」という姿勢を強く保護者に伝えることが大切です。
最近、急に情緒不安定になった子ども
ここ数日、すぐに泣いたり、乱暴したり、いじわるを言ったりと、いつもといようすが違う・・・。家庭でのようすを聞きたいけれど・・・という子どもの場合、保護者にどのように話を切り出していけばよいのでしょう?
(クレーマータイプ)エピソードを話しながら、えん曲に問題の核心に触れていく伝え方を
いきなり「最近、情緒不安定のようですが、おうちではどうですか?」というと、「家庭に問題があるといいたいの?」と受け取られてしまうこともあります。まず、情緒不安定という言葉は、保護者を不安にするので、ストレートに口に出すのは控えましょう。「今日、お友だちとトラブルがありまして・・・」と具体的なエピソードを伝えながら、「穏やかなAちゃんが、最近、ささいなことで友だちに手が出てしまうことがあり、実はちょっと気になっていました」と徐々に核心に触れていくとよいでしょう。
また、「おうちではどうですか?」と原因を家庭だけに求めるのではなく、「園でいやなことがあったときは、何かおうちで話してはいませんか?」と互いの情報を出し合える伝え方をしていきましょう。
(落ち込みタイプ)具体的な対応を示して安心感を与える
「情緒不安定」と聞くと、「自分のかかわり方が悪いのでは」と考え、思い納屋でしまうタイプの保護者には、本題に入る前に、子どものよい面や成長を感じさせるエピソードを話してから、「そういえば、最近・・・」と本題を切り出すとよいでしょう。
「情緒不安定になるのは、必ず何か原因があるわけではなく、成長の一過程なので、そういう時期もありますよ」と話すことも大切です。
「園でもAちゃんがゆったりすごせるように配慮しますので、家庭ではいつも以上にスキンシップを取ってください。園と家庭でAちゃんの心の不安に寄り添うことで、しだいに落ち着いてくると思います」と具体的な対応を示せば、保護者も安心できるはずです。
発達の遅れが気になる
数ヶ月ようすを見てきたけれど、やはり発達障害の可能性もありそう。保護者に現状を知ってもらい、いっしょに考えていきたい・・・という話を保護者に切り出したい場合、どのようにしたらよいのでしょう?
(無関心タイプ)園での子どものようすを見てもらいましょう
発達の遅れを、「まだ小さいからできないだけ」ととらえている保護者には、「言葉の遅れが気なっている」とだけ伝えても、園と家庭で連携した対応がなかなかとれないこともあります。
まずは園でのようすを見てもらい、担任をはじめ、主任や園長も同席の場で、「わたしたちに伝えたいことがあるのに、伝えられないもどかしさを感じて、つらい思いをしているようです。Bちゃんにはもっとよい対応があるはずなので、苦手なところを伸ばすために、専門家の知識を聞いてみるのもよいかと考えています」と切り出したほうがうまくいく場合もあります。
ただ、専門機関をすすめることで、保護者との関係が悪化することもないとはいえません。難しい対応なので、園長や主任を中心に慎重にすすめることが必要です。
(クレーマータイプ)問題点だけでなく、園が行ってきた対応も伝えましょう
「手がかかる子には、すぐに障害を疑う」と保護者が園に不満を感じるのは、園で保育者がいろいろとかかわり方のくふうをしてきた経緯を、保護者が知らないからです。
「工作の途中で部屋を飛び出すことがあります。課題が多くて飽きてしまうのかと思
い、課題を減らしたり、途中まで保育者が手伝ったりするなど、Bちゃんに合ったや
り方を探ってきたのですが・・・」というように、問題点だけではなく、今まで問題
にどう対応してきたか、その具体例を伝えることが大切です。
また、園は療育の専門機関や病院ではないので、発達障害と決め付けて話すのはよく
ありません。
「Bちゃんんおよりよい成長のために、園と家庭で協力しながらBちゃんに合った対
応を考えていきたい」という姿勢で保護者に向き合っていけるとよいですね。
園でおきたけがやトラブル
まずは園で起きたけがや子どもどうしのもめ事は、基本的に園の責任という気持ちと姿勢をもちましょう。「お子さんにつらい思いをさせて申し訳ありませんでした」「ご心配をおかけして、すみません」という姿勢と言葉があるかないかは、保護者の心象を大きく左右します。
そして、つねに客観的な視点でけがやトラブルの経緯を伝え、事実関係がわからないときは、周囲から出来る限りの情報収集をし、保護者が納得できる説明を心がけましょう。
目を離した隙のトラブル
見ていないところで、おもちゃの取り合いが発生。歯型がつくほどかまれてしまった場合、かまれた子どもの保護者にどのように話しを切り出したらよいのでしょう?
(クレーマータイプ)子どもの間では問題が解決していることを伝えましょう
見ていなかった保育者への批判、かんだ子への批判などを受けるかもしれませんが、まずは話の腰を折らずに最後までよく聞くことが大切です。
保護者が「またこういうことがあるのでは」と心配する場合は、「フリーの保育者の協力も得ながら、注意してよく見ます」など、具体的な今後の配慮を示しましょう。
また、「痛い思いをさせてかわいそうなことをしていまいましたが、Cくんはやり返さずにがまんしてえらかったです」などと、評価できる点を話したり、「かんだ子もごめんなさいができ、Cくんもお友だちを許すことができました」と、子どもの間では問題が解決していることを伝えたりすると、保護者も納得しやすくなります。
(落ち込みタイプ)保護者が視点を変えられる伝え方を
このタイプの保護者は「いつもやられているの?」と心配するあまり、子どもに「あの子とあそんじゃだめ」と言うこともあります。「Cくんだからではなく、欲しかったおもちゃをたまたまCくんが持っていたからのようです」「かんだ子もすぐに謝って、その後は仲良くあそんでいました」などと、保護者がかんだ子に必要以上の悪印象を持たないように配慮することも必要です。
逆に、「やられてばかりの弱い子」と子どもをふがいなく思ってしまう保護者には、「やり返さずにがまんしたところがCくんのよいところ」と伝え、保護者が違う角度で子どものことを評価する目を持てるようにしてみましょう。
子どもによる不注意によるけが
本棚によじのぼっているのを何度も注意したけれど、目を離したすきにまた登り、ついに転落・・・このような場合、転落した子どもの保護者にどのように伝える?
(クレーマータイプ)子どもの不注意しすぎないように
何度も注意したことを前面に出すと、保護者には保育者の責任逃れと取られてしまいます。まずは「園内でこのような事故がおきたことをおわびします。この件は園全体でしっかりと受け止め、あらためて保育者と全園児に注意喚起し、再発防止に努めます」と謝罪しましょう。
しかし、子どもがルールを守らなかったことも伝えなくてはなりません。「Dくんにも注意を呼びかけましたが、事故を防げぜずにすみませんでした」などとやんわりと伝えましょう。
また、「子どもは小さいけがを経験して、大きなけがを回避する力を身につけている」ということを懇談会やおたよりを通じて、折りに触れ、全保護者に伝えておくことも大切です。
(落ち込みタイプ)保護者が子どもを必要以上にしからない配慮を
「先生に注意されているのに言うことを聞かなかった」という点を重く受け止めたり、「子どものせいで、わたしが先生に謝るはめになった」ととらえたりして、子どもをきつくしかる保護者もいます。
そのような保護者には、「子どもは楽しくなるとエスカレートしてしまうことがあります」と、一般的な子どもの姿を伝え、特別ではないことを話しましょう。
「活発で行動力のあるDくんはクラスの人気者です。今回は少し勢いがついてけがをしてしまいましたが、だれよりも本人が痛い思いをしたので、本棚に登ったことは十分反省しています」などと、子どものよい面を交えながら、保護者が子どもを信じられるような伝え方をしましょう。
保護者に改善を求めたいこと
保育者も、保護者も、当然それぞれに違った立場があります。立場が違えば、感じ方も考えも違ってくるもの。互いが自分の立場からだけの主張をしている限り、問題を改善することはできません。ですから、保育者は、保護者の立場に立って、その背景に思いをめぐらせてみることが必要です。
また、保護者にはふだんから「園は家庭とは違う集団生活の場。自分の子だけが育つ場ではなく、みんなで育ちあう場」であることを伝え、園の方針や集団生活のルールへの理解を深めてもらうことも大切です。
子どもの具合が悪くても登園させてくる
せきや鼻水が出ていても微熱であれば登園させてくる保護者・・・。体調が悪いときは休ませることを理解してもらうためには、どうしたらよいのでしょう・・・。
(クレーマータイプ)園のルールを伝える前に、保護者に共感する言葉かけを
「この程度の症状なら登園させてほしい」と思う保護者には、「仕事を休めないから」「子どもが行きたいと言うから」といった事情があるものです。「困ります」と頭ごなしにルールを突きつけるのではなく、「お仕事をさえていると大変ですよね」「大好きな園に行かせてあげたいですよね」などと、まずは保護者に共感する言葉かけをしましょう。
そのうえで、「でも、体調が万全でないときに、元気な子たちといっしょに活動するのは、本人がつらい思いをすることになるのでかわいそうです」と、子どもの立場に立った理由を伝えて話をしてみましょう。保護者が、自分の都合でなく、子どものために、という視点に切り替えられる伝え方ができるとよいですね。
(無関心タイプ)
体調不良のときは休ませるように何度もお願いしても、「少しせきがあるけれど、元気なので」と自分の子が大丈夫なら登園させてもよい、という考えの保護者には、多少厳しくても、集団生活のルールについて再度しっかりと伝える必要があります。
「病院によってから来てください」「医師の許可が出たら登園してください」「だいじをとって午前中だけで帰りましょう」と具体的な譲歩を出しつつ、「ほかの子にうつることもあるので、登園させたい気持ちもわかりますが、集団生活のルールとして、お友だちへの配慮もお願いします」と話してみましょう。
生活リズムの改善を求めたい
登園が遅く、朝ごはんを食べてきません。就寝が遅いようで、午前中は眠そうにしているのも気になるので、早寝早起きを習慣づけてほしい。
(クレーマータイプ)子どものための提案であることが伝わるように話しましょう
「早く寝かせて、しっかり朝食を食べさせてきてください」と、ストレートに改善を求めてしまうと、「忙しいんだからしかたない」「精一杯やっているのに・・・」と感じて態度を硬くしてしまう保護者もいます。
まずは、「お仕事と家事の両立はたいへんですよね」と、保護者の事情に共感することが大切です。そのうえで、「でも、午前中はどうもエンジンがかからず、機嫌よく友だちと遊べずにいる姿を目にします」というように、保護者を責めるのではなく、子どものようすを伝えることで、保護者自身が今のままではいけないと思えるように
しましょう。
(落ち込みタイプ)具体的なアドバイスと、その後のフォローが大切
「朝食を食べないから元気がでない」「早寝早起きをさせないとだめ」と問題点を突きつけると、「自分はだめな親だ」と自信をなくしてしまいます。「忙しい朝の食事作りは大変ですよね。バナナ1本、牛乳1杯でもよいですよ」「なかなか布団に入ってくれないときは、絵本を読んであげるといいですよ。Eちゃんのお気に入りの絵本で布団に誘ってみるのもいいかもしれないですね」などと、具体的なアドバイスをしましょう。
そして、そのあとは、「最近、Eちゃん、朝から元気ですよ。お母さんが頑張ってくれているおかげです」と声をかけ、保護者の努力を認めることが大切です。