保育の造形遊びで表現や技法を楽しんで作品展につなげよう
仲間と力を合わせて作る楽しさもいっぱいの共同制作。
子どもたちにしか作ることができないひとつの作品をつくるために、子どものアイデアと感覚、そして創造性を存分に引き出したいですね。
共同制作のテーマ決めから作品展後まで、子どもが主役の作品展をつくるための保育のポイントをご紹介します。
子どもの心の動きや育ちを、日ごろからよく観察、記録することが大切です。
よい作品展とは、子どもが自分の発想、自分の力で作り上げていく作品展です。
もちろん、そこには保育者の適切なサポートが必要ですが、「つねに子どもが主体であること」が子どもにとっていちばん楽しい作品展であり、子どもがひとまわり大きく成長できる作品展にもなります。
本来、子どもはたくさんのアイデアやすばらしい感覚をもっています。
このアイデアや感覚は、子どもがわくわくできること、楽しいと感じられることに出会ったときに自然とあふれ出てきます。
子どもがわくわく感をもって、楽しみながら作品作りに取り組めるようにするには、まず子どもの心をはずませるようなテーマを選ぶことが大切です。
子どもたちがいま、興味をもっているものは何か、関心を寄せているあそびは何か、どんなことをやりたがっているかなど、子どもの心が向いている方向や育ちを保育者がしっかりつかんでいれば、おのずとテーマは浮かんでくるでしょう。
そのためには、日ごろから子どもと同じ目線で生活し、活動しながら、子どもの心の動きや育ちをとらえ、記録していくことが大切です。
テーマを決めるために、リサーチを念入りに
日ごろから、子どものあいだで流行っているあそびや、やっているあそびは何か、興味や関心が向いていることはなにか、アンテナを張り巡らせ記録しておきましょう。
作品展の1~2ヶ月前になったら、保育者の頭のなかで、テーマになりそうな題材を2~3点にしぼりましょう。
子どもの心をゆさぶって、反応をチェック
テーマ候補の題材に関する話題を出したり、それに結びつくようなあそびや活動をしたりしながら、子どもの反応をみてみましょう。
話題にのってきたり、あそびが盛り上がって発展したりするようすがみられれば、テーマとして有力になります。
実物を見たり、体験できたりする場を設ける
子ども主体の作品展にするには、子どもみずから「こんなものをつくりたい」というイメージを持つことが大切です。
そのために必要なのは、見たり、聞いたりという「実体験」です。動物園で動物を見る、商店街で買い物をするなど、体験から得た感動は制作活動へのエネルギーになります。
テーマや園の事情によってはできないこともありますが、可能な範囲で体験の場を設けられるとよいですね。
子どもの「つくってみたい」をすくい取る
テーマへの興味の高まりが見られたら、「どんなところが面白かった?」「○○くんだったら、どんなことがやりたい?」と質問形式で声かけしてみましょう。
そこから飛び出てくる子どもの言葉をすくいとりながら、、自然な流れで「それじゃあ○○を作ってみよう」「描いてみよう」と制作につなげていきましょう。
話し合いや体験を通じて、個々のイメージを共有化していきましょう
テーマが決まって、そのテーマから子どもが抱くイメージはそれぞれ違います。
例えば、「動物の国」というテーマから動物園を思い描く子もいれば、ジャングルの動物をイメージする子もいます。
共同制作では、ある程度子どものイメージをまとめてから具体的に作品作りに進めていく作業も必要です。
この「イメージの共有化」こそ、共同制作の醍醐味だといえます。
しかし、ここでも主体はあくまでも子どもたちです。
保育者の完成されたイメージをおしつけてしまわない注意が必要です。
図鑑をみたり、動物園に行ったことの経験や体験を伝えたりしながら、個々のイメージを出し合い、あれこれ話し合うことが大切です。
できればみんなで動物園にいけるとよいですね。実物をみたり、触れたりして実際に体験することは、イメージの共感や共有化に役立つだけでなく、作品を作る際の大きな原動力にもなります。
もちろん、まだ子どもたちだけの話し合いでイメージをまとめていくのは難しいので、保育者が助言やかじ取りをしながらサポートしていくことも必要です。
まずは小さな個人作品から作ってみましょう
共同制作としてどういうものを作るかにもよりますが、できるなら最初からみんなで大きな作品作りに取りかかるのではなく、、まずは一人ひとりが自分のイメージで作ることができる小さな作品から作りはじめるとよいでしょう。
「動物の国」であれば、一人ひとりが自分の作りたい動物を自由に作り、次のステップで動物の国の王様やお城などの大きな作品をみんなで分担しながら作っていく、という流れです。
個人制作は「自分の作品」として愛着や思い入れも強くなります。そこから、みんなで作る大きな作品に発展させることで、子どものモチベーションが高まります。
十分な材料と少しの助言で、子どもの想像力を引き出しましょう
制作をはじめる際は、廃材やテープ類、折り紙、画用紙、段ボールなど、いままでの保育で使ったことのある材料や道具をいろいろと用意しましょう。
たくさんの材料をもとに、何をどのように使ってつくればよいのか戸惑っている子がいれば、「何をつくるの?」「どんなふうにしたい?」と子どものイメージを聞きながら、「この材料はどう?」などと助言しましょう。
保育における粘土遊びの導入とねらいとは?
保育における粘土遊びの導入とねらいとは? 子どもたちが大好きな粘土あそび。 でも、ただなんとなくあそばせているだけ、ということはありませんか? 保育者のちょっとしたことばかけや援助によって、子どもたちの発想が広がったり、創作意...
テーマ決定
それぞれのイメージをひとつにまとめていきましょう
テーマが決まっても、子どもが抱く「作りたいもの」のイメージはそれぞれ違います。
「わたしは○○が作りたい」「ぼくは、△△している□□を作りたい」と、それぞれが描くイメージを出し合ったり、図鑑や写真を見ながら、実施に作るもののイメージをまとめあげていきましょう。
制作物を具体的に決めていきましょう
子どもたちの作りたいものの意見を出し合い、話し合いをしながら、実際につくるものをしぼっていきましょう。
メインになる大きな作品が複数になったときは、作りたい作品ごとにグループ分けしましょう。
いよいよ制作開始!
子どもが自分のイメージを形にしやすいように、廃材や工作用の素材、はさみやペンなどの道具は十分な量を用意しましょう。はさみやカッターなどの使い方には十分な注意を払いましょう。
制作途中の中だるみが起きないよう、活動を工夫しましょう
共同制作の作品は2~3日でできるものではなく、ある程度の制作期間が必要になります。
そのあいだには、子どもの集中力や制作への意欲が半減してしまうこともあります。
最初から1週間程度で完成できるようなプランを考えておく必要もありますが、中だるみしないように保育者が進め方の配慮をすることも大切です。
同じ工程を2日、3日と続けていては飽きてしまうので、毎日制作工程を少しずつステップアップさせたり、素材を変えたり、子どもの興味や関心を促すような素材を小出しにしたりしながら、子どものワクワク感を引き出していきましょう。
また、制作期間中はどうしても制作中心の日課になりがちですが、毎日制作だけでは、子どもにとって制作活動が楽しいものではなくなってしまうこともあります。
ふだんの保育の流れを大事に、制作以外の活動時間もしっかり確保しましょう。
活動が単調にならないよう、めりはりのある保育を心がけることで、制作にも無理なく集中して取り組めるようになります。
子どもの活動を見守りながら、ここぞというときにサポート
保育者が口や手を出しすぎると、子どものイメージを消してしまうこともあります。
子どものイメージに近い作品を作るためのサポートに徹しましょう。
制作に行き詰っている子には、素材や作り方について助言したり、うまく活動に参加できない子には、その子なりの参加のしかたを示したりしながら、活動を促していきましょう。
当日に向けて、子どものワクワク感を盛りあげましょう
自分の作品を家族はもちろん、たくさんの人が見にきてくれる、ということで子どもは「もっとすごいのを作ろう」「これを見てもらいたい」と、よりやる気になります。
「○○ちゃんは、どこをおとうさんとおかあさんに見てもらいたい?」「○○くんのこのアイデアは絶対におかあさんにみてもらおうね」といった声かけで、子どもの気持ちを当日に向けて盛り上げていきましょう。
また、作品展のお知らせを家庭に配布することで、家庭でも作品展の話題で盛り上がれます。家族みんなが作品展を楽しみにしている、ということが子どもに伝わるといいですね。
作品の個性と魅力を引き出す展示を工夫しましょう
作品展の主役は、あくまで子どもの作品です。
作品を引き立てるための飾りや工夫は必要ですが、やりすぎは禁物です。
装飾の色や大きさ、配置などは、子どもの作品の印象が薄れてしまわないよう十分配慮しましょう。
限られたスペースで作品の魅力をより効果的に引き出すには、作品の配置や展示方法にも工夫が必要です。
ただテーブルに並べたり、壁に貼ったりするだけでなく、高低差のある台を使って奥行きのある配置にしたり、天井から吊るす、床に並べるなどしたりして、作品の個性を引き立てる配置を考えましょう。
また、通路幅を広く取るなど、見やすさへの配慮も必要です。