保育での精神疾患や鬱病による休職や離職を予防するには

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保育での精神疾患や鬱病による休職や離職を予防するには

「子どもの成長がうれしい」「保育にやりがいを感じる」など、子どもや保育を考えるいっぽうで、自分の心の健康はあとまわしになっていませんか?ストレスや心の問題にについて「保育者」という仕事に注目しながら、保育者集団の問題として考えてみましょう。

個人で、職場で取り組めることを考えて、保育者のストレスケアをしたいですね。

まず、保育者が抱えるストレスの原因を考えてみましょう。ストレスの原因を専門用語で「ストレッサー」といいます。ストレッサーは大きく分けると、個人が直接感じ取りやすい(=目に見えやすい)問題と、それらの背景にある(=目に見えにくい)問題の2つに分けられます。

保育者の心のトラブルの原因として、「職場の人間関係」「保育の悩み」「保護者対応」が挙げられますが、これらは「目に見えやすいストレッサー」です。

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目に見えやすいストレッサーとは

職場の人間関係

「園長に厳しい言葉を言われる」「いっしょに組んでいる先生と保育観が合わない」など人間関係の悩みは尽きないもの。職場には先輩がいて、同僚がいて、後輩もいます。年齢も価値観もバラバラな人が集まるのだから、意見がぶつかり合うことや、理不尽なことを言われることもあるでしょう。

保育の悩み

「担任しているクラスがまとまらない」「言葉かけや制作の指導がうまくいかない」など、自分の保育に対して悩んでいる保育者は少なくありません。最近では「自分のできが悪いからではないか」と自分を追いつめてしまう人が多いように感じられます。

保護者対応

保護者から、心ないことを言われてしまうことが、ときにはあるでしょう。「何度も無理な要求をされてしまう」「家庭と園との保育観が違っていて、理解してもらえない」など理由はさまざまかと思いますが、そんな保護者に苦手意識を感じてしまうこともありますね。

目に見えにくいストレッサ―とは

目に見えやすいストレッサ―は、すぐに思いついたり、気がつきやすいでしょう。しかし、自分では気づきにくいことも実はストレッサーになっているのです。目に見えにくいストレッサ―を「本来的ストレッサ―」といいます。

本来的ストレッサーには、「コミュニケーション労働」「長時間労働」「仕事量の負担が大きい職場」が挙げられます。

コミュニケーション労働

保育の現場では、子ども個人だけでなく、集団全体に働きかけますね。そして、子どもの反応をダイレクトに感じながら、一人ひとりに合った受け止め方、投げかけ方を瞬時に考えて返していかなければなりません。

子どもとのコミュニケーションにも、実は大きな心のエネルギーを費やしているのです。さらに、子どもとのやりとりは、自分の感情を正直に表現するのではなく、「気分が落ち込んでいるけれど、笑顔で」など、感情を抑えながら働きかけることもあるでしょう。これにも実は心のエネルギーを使っています。

さらに、子どもとのやりとりは、自分の感情を正直に表現するのではなく、「気分が落ち込んでいるけれど、笑顔で」など、感情を抑えながら働きかけることもあるでしょう。これにも実は心のエネルギーを使っています。しかし、自分の働きかけで子どもが笑顔になったり、成長が見られたりすると、それが喜びに転化し、疲れが吹き飛んだように感じてしまうのです。子どもとのコミュニケーションに働き甲斐を感じる保育者は、子どもとのやりとりがストレスの一因になっているとは気づきづらいものです。

長時間労働

日中は保育を、保育後は会議や行事の準備などがあるため、個人の仕事は時間の確保が難しく、持ち帰ることもあるでしょう。デスクワークの志保とに比べて体を動かすことも多く、加えて持ち帰り仕事のために睡眠時間が削られてしまうと、肉体的疲労が大きいことは言うまでもありません。長時間働くことは、肉体的疲労につながるだけでなく、心にも大きな負担となります。

また、仮に持ち帰っただけで仕事をしなかったとしても、仕事を持ち帰ってしまった気分の悪さが残るもの。こういった仕事の疲れはストレス性の疲れであり、あとに引きづるのが特徴でもあります。

気持ちの切り替えが必要であるにも関わらず、仕事量の多さや忙しさから仕事(の気分)を持ち帰るのは、疲れを悪化させてしまいます。

仕事量の負担が大きい集団

保育の仕事は定量も際限もなく、ここまでやればよいという境界線がありません。保育をよくしたいと思えば思うほど、課題が多くなります。

課題達成のために無理を続ければ、いつか体が悲鳴を上げるでしょう。ですから、どこかで線引きをしなくてはなりません。

持ち帰りの仕事は週に2回まで、土日はしっかり休むなど、仕事量の限界を設定し休息をとることが大切です。

また、仕事をこなせずに体を壊してしまうと「あの人は打たれ弱かったから」などと、まるで個人に問題があるかのような評価を受けることがあります。しかし、問題は職場集団の一個人が抱える仕事のきつさ、ひいては職場集団のあり方がベースにあるのです。

まずは個々の仕事や職場環境を見直してみましょう。仕事量や分担に無理はないかなど、個人だけを見ていたら見えてこなかった原因が見えてくるはずです。

ストレスからくる症状とは

ストレスがたまると、心や体にさまざまな症状が出てきます。自分の体が出すSOSに早く気づき、対処できるようにしましょう。

だいたいの心や体の疲れは、しっかりと寝て休めば和らぐものです。心と体の疲労回復にとって睡眠時間の確保は必要不可欠です。疲れがたまりすぎると寝付きが悪く、眠りも浅くなるため、まずはその悪循環を断つことから始めましょう。

休んでも疲れがなかなか取れないようであれば、それは体が出すSOSのサインかもしれません。治療に時間を要す深刻な症状が出る前に、病院を受診するとよいでしょう。

早めの対応を心がけ、ストレス対処能力の低下を未然に防ぐことが大切です。

ストレス対処能力とは

例えば、保護者とのやりとりにストレスを感じていた場合、先輩保育者に相談したり、参考資料などを集めたりして保護者対応そのものをなんとかしようと考えがちです。しかし、「あのときはいやだったけれど、明日になれば落ちついて話しができるかも」と問題を一時棚上げして、いやなことは考えないようにするという方法もあります。問題そのものを解決しようとするのではなく、時間が解決してくれるという考えも有効な対処法なのです。

これらはどちらがよいち優劣をつけられるものではありませんが、ストレスの状況に応じて柔軟にストレス対処行動を選択し、バランスを取ることが重要なのです。

「ストレス対処能力」とは、言い換えると生きる力の強さなのです。

ストレス対処能力が低下すると

めいっぱい働きすぎて、心も体も疲労していくと、生きる力が弱まり、ストレス対処能力が低下していきます。こんなときは、ささいなできごとでピーンと張っていた心がポキンと折れてしまいます。

働きすぎていると感じたときは、1日のなかで、または1週間のなかで休む時間をちゃんととっていたか振り返ってみましょう。

「がんばって働くこと=よいこと」と思いがちですが、「働いて休む」のが人間の基本リズムです。

積極的な休息を心がけましょう。

いきいきと働くためにできること

よりよい保育のため、そして自分自身の心の健康のためにも、ストレスをためずに働ける環境づくりが必要です。

ストレスの少ない活気ある職場にするには、職員どうしの協力が大切です。

働きやすい職場環境づくりについて考えてみましょう。

保育者の多様性を尊重する

同じ「保育者」とはいえ、性格や保育のやり方、考え方は人それぞれ違います。その違いが大きいと人間関係のストレスが生じるように思われがちですが、実はそうではなく、保育者の違い、つまり多様性を受け入れられないためにストレスが生まれるのです。

保育者はさまざまな子どもや保護者を受け止めて、日々保育をしています。それと同じように保育者どうしが多様性を認め合うと、仲間を受け止め支え合う力を高められるでしょう。

特に新人保育者は、自分を他社との比較でとらえ、「自分の力が足りないのでは」と思いがちです。そんなときは周囲の保育者が「あなたはあなたでよいんだよ」とフォローして支え、成功体験を重ねる手助けをすることが重要になり、これが生きる力へとつながっていきます。

「人の多様性を認め、人格として尊重すること」を、職場における人間関係のルールとして再認識しましょう。

保育観を共有する

保育者が集団としてまとまるには、保育に対する共通の思いを持つことが大切です。それにはまず、保育者間で「自分たちは同じ目標に向かっている仲間どうしである」という相互理解が必要不可欠です。そして「何に対してどのような評価をするかというものさし」を共有します。

例えば、園で定めた同じ目標や子どもの姿に向けて保育をしていると理解しているか、子どもの表情や行動に対しての気づきや評価する力、感覚、つまり保育観が共有できているかを再確認してみましょう。

保育観の共有を深めていくためには、会議などで保育内容について議論することを重視し、意見の以外がある場合はしっかり話し合うようにしましょう。また、行事の反省会や学期末の会議などの「まとめ」を丁寧に行い、保育者間で保育観の共有を積み重ねていきましょう。

職場の仲間どうしでお茶会や食事会などを開いて、話すこともよいかもしれません。園長の立場にあれば、職員の話しを聞いたり、必要に応じて職員の配置換えをしてみるのもよいでしょう。

個人でできる、ストレスと向き合うために自分と向き合ってみましょう

「どうしよう」と悩んだときは、まず自分自身と向き合ってみましょう。ストレスをためずに、いきいきと働くために3つのポイントを見ていきます。

自分を客観視する

保育の悩みなど、考え込んでしまうときは、「考えてもしょうがないことは考えない」と発想を転換させることが必要です。例えば、持ち帰った指導案の書き方について迷ったとします。しかし、それが翌日に主任に確認しなければ解決しない問題であれば、一晩中悩んでもしかたありません。

そこでいつまでも悩まずに「明日にならなきゃ決められないんだから」と今の自分の立場や状況を客観的に見つめなおし、「今日は早く寝て、すっきりした頭で明日相談しよう!」と気持ちを切り替えることが大切です。気にするなと言われても気になってしまうものですが、そんなときは「気になることをひとつノートに書いたら、もうそのことは考えない」などルールを決めて、気持ちを切り替えるよう心がけましょう。

合言葉は「なんとかなるだろう」

一見、ふまじめに捉えられそうな言葉ですが、「なんとかなる」と思えるということは、過去にだれかの助けをかり、支えられ、なんとかなった経験があると自信が持てているということなのです。例えば、行事の制作が多く手一杯になってしまったとき、それに気づいた先輩保育者や同僚が手伝ってくれて、なんとか終わったという経験はありませんか?その経験から、「人と人とのつながり」や「たくさんの人に支えられて、これまでできたきた」と気づくことができれば、今回もきっと大丈夫と思考を転換できます。

保育以外のことに心を使う

仕事以外のでも保育のことを考えたり準備をしたりして、自分の生活が保育一色になることはいけないことではありません。

しかし、趣味やあそびなど、仕事とは違う心の使い方をしなければ心も疲れてしまいます。自分の生活を人間らしい生活として充実させること自体、仕事の疲れやストレスを回復させる基本となります。

睡眠時間、家族や友人とすごす時間、趣味や体を動かす時間などが、一週間といった一定期間のなかにバランスよく含まれていればよいのです。

子どもがするように、あそんだり休んだり、家族と触れ合ったり、ゆっくりとすることは、自分のペースではなく、子どもの目線やスピードを感じてみるということでもあります。

結局は保育と違う心の使い方をすることになるので、心が軽くなるでしょう。

自分や職場の同僚が悩んでいる状況に直面した場合、どのようにしたらよいのでしょうか。さまざまな悩みに対する手助けをご紹介します。

体は疲れていても、なんとなく休んではいけないと思ってしまい、休めないという悩み

「ちょっと疲れたな」程度のときに体を休めれば、ほとんどの人は元気になります。ところが、「休んではいけないのでは」という固定観念にとらわれ、休みを取れずに症状をこじらせてしまうため、自分の力では治せなくなってしまうこともあります。

また、一人担任の場合は特に、「自分のクラスなのだから、行かなくては」と思ってしまいがちです。

しかし、休むことも仕事のひとつだと考え、「休んではいけない」」という思い込みを取り払うことも大切です。休んでみても、もし疲れが取れないようであれば、専門機関を受診してみるののよいかもしれません。

休んではいけないと思ってしまわない、気持ちも大切です。

後輩が悩んでいるようなのですが、どうやって声をかけようかという悩み

悩んでいる人は、自分の悩みを受け止めてほしいものです。悩んでいる人に対して、「そんなに悩まないでいいよ」という言葉かけをするのは避けましょう。

まずは悩みを聞いてあげることが大切です。

「自分の話を聞いてくれた」と人として大切にされている実感、そしてそういう存在がそばにいることに気づく体験を、悩んでいる人が確実に得られるようにします。

むりやり話を聞き出したり、アドバイスをする必要はありません。その人が自分から悩みを打ち明けるのを気長に待つとともに、「わたしはこの職場にいていいんだ」と思えるような職場づくりに努めましょう。

いっぽう、保育者は子どもにとって保育環境の一部です。保育者自身に余裕やゆとりがあること、また保育者どうしが支え合い、良好な関係であることが、子どもにとっても重要なことです。

◎うつ病と診断されて休職中です。症状も落ち着いてきたので、復帰を考えているのですが、どうすればよいでしょう・・・という悩み

まずは勤務ではなく、治療の一環として、ならし出勤をしてみましょう。園の門をくぐることから始め、一定時間園ですごすようにしていきます。厚生労働省では、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引」を設けています。職場復帰支援の流れや休職中のケア等が紹介されていますので、ご覧ください。

職場復帰については、無理をすることは禁物です。力量以上の頑張りをしたり、元気そうに振る舞ったりすることは病気の再発につながるおそれがあります。

主治医と連携し無理のないよう職場復帰をめざしましょう。

また、勤務する園を辞め、新しい園に就職することも、ひとつの手です。保育がしたい、子どもが好きという気持ちがあっても、働く環境として、自分に合っていないのであれば、思い切ってその職場を辞めて、リフレッシュすることもよいでしょう。

どうしても合わない園長、先輩など、自分自身ではどうしようもないことで悩んでいるくらいなら、いっそのこと辞めてしまいましょう。

退職することは決して逃げではありません。保育者として、よりよい保育をするためには、自分自身の調子を整えることも、とても大切なことです。

うつ病だと診断されて、休職している職員はどう対応するか、という悩み

休職中の職員には、極力連絡を取らないようにすることがよいとされていますが、人によっては連絡がないと「自分は必要とされていないんだ」と思いつめてしまう場合もあります。その人の性格を見極めて、連絡するかどうかを考えましょう。

ならし出勤中も、必要以上に話しかける必要はありません。

「おはよう」「お疲れ様」と笑顔で一声かけるだけで、「仲間が応援してくれている」「見捨てられていないんだ」と感じることができます。

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保育者
ほいくなびのプロフィール
保育をしている人を応援するサイトです。これからも、よりよい保育を実践していきたいです♪横浜市に引っ越したことを機に、これまで勤務していた保育園を退職。いまは新たな園で勤務し、バタバタな毎日を過ごしています。転職することは不安もあったけれど、何とか頑張っていますヾ(*´∀`*)ノ 園では7月から始まるプールに向けて、掃除の話しが出てきました。本格的な夏まであと少し!
ほいくなび