この記事で解決する問題
子どもの保育記録を書いているけれど、よりよい保育に向けて、ポイントを押さえた記録が書けるようになりたい。どのような視点で書いていけばいいのかな。
という疑問にお答えします。
①保育記録は、子どもの育ちの記録であり、保育を考える手がかりとなる②保育記録は指導計画を考えるところからはじまる③保育記録の三項
④どんなふうに見る?
➄保育にいかす、個人の保育記録の書き方
⑥どんなふうに「記録」する?
上記のポイントごとに解説していきます。
保育記録をじょうずに活用すれば、子どもの育ちをよりよく援助するための保育者の心強い道しるべになります。
保育記録の呼び方や様式は様々ですが、子供の育ちを記録してよりよい保育につなげましょう
保育記録は、子どもの育ちの記録であり、保育を考える手がかりとなる
子どもたちの生活や成長、変化は昨日から今日、
それらを継続的にみつめ、
そこで、じょうずに活用したいのが保育記録です。
子どもとどう関わり、
保育記録は指導計画を考えるところからはじまる
日々のあそびや活動のは、
事前に計画を立てておくからこそ、実際のあそびや活動のなかで。
そして、その活動のようすを保育記録に書くことで、
保育所保育指針の改定のなかにも、保育の質を向上させるポイントが記述されているので、参考にしてみるのもよいかもしれません。
保育記録の三項
計画→見る→記録→計画・・・とつながっていきます。
計画
記録から子どもたちの今の姿や見られる成長をとらえ、
見る
事前に5領域の視点から計画を立てておくことで、
記録
あそびや活動のなかで、どんなことがあり、誰と関わり、
次のページでは、全体の中の「個」と、「個」のなかの変化を記録していくコツをご紹介します。
どんなふうに見る?
全体のなかでの「個」と、「個」のなかの変化をみる
集団生活の関わり合いのなかで、子どもたちは日々成長し変化しています。
「個」の成長の変化と同時に、同じ年齢や集団のなかで子どもがどんなようすかを見るのも大切なことです。
このふたつの点から子どもの成長を見るために、クラス全員が毎日同じ活動をする場面をみていきましょう。
例えば、片付けの時間。ひとりで片付けをしている子どももいれば、友だちに声をかけながら片付けている子もいます(全体のなかの個)。
また、機能までは一人だった子どもが、今日は友だちといっしょにという姿に気づけたりもします(「個」の変化)。
朝の出席ノートのシール貼り、給食の準備などの場面も、観察してみると新しい発見があるかもしれません。
自分を出せているか、自己発揮できているかを見る
あそびや活動をみていくうえで大切なのが、子ども自身が楽しんでいるか、自己発揮できているかということです。
「(保育者の)計画どおりにここまでの活動ができた、またはできなかった」と到達度で測るのはなく、子どもの気持ちに寄り添って見守り、その変化や子どもが達成感を得ているかを見届けることが大切です。
楽しんで活動できていれば、子どもはぐんぐん自己発揮していくことができます。
逆に不安要素があったり、できないことで自信をなくしてしまったりすると、活動が消極的になっていきます。保育者は、そんな子どものようすや気持ちの変化、思いを受け止め、受け入れたうえで、子どもが自信をもって活動していけるよう援助していきましょう。
例えば、粘土でお団子をつくる活動のときに、友だち同士が、作ったお団子を交換しているなどのやりとりを楽しんでいるときに、黙々とお団子を作り続ける子どもがいる場合、周りの子とは違う行動でも、楽しめているようであればそれを見守りましょう。
保育にいかす、個人の保育記録の書き方
最終学年の学年末には、小学校への引き継ぎのための記録となる「児童保育要録」(保育園)、「幼児指導要録」(幼稚園)を書きます。
これは、小学校の先生がその子との関わり方を考えるときのヒントにし、小学校に入っても子どもの育ちが途切れないようにするためのものです。決して成績表にならないよう、一年間の子どものようすや育ちを書いていきましょう。
幼稚園なら・・・
発達を時期ごとにまとめる
子どもの育ちの連続性を確保するために、園と小学校で発達の流れを理解することが大切です。どういう育ちをしてきたか順を追って記録することで、育ちの見通しがたち、小学校でどう関わっていくかを考える材料にします。
発達の状況を「進級当初」「1学期」などと、時期ごとにまとめると、成長のようすが伝わりやすくなります。
進級時のようすを記録する
小学校教育の基盤となる幼稚園教育は、小学校教育との円滑な接続を図ることが大切です。
大きな環境の変化である小学校入学に際しては、小学校との密な連携が必要となります。
幼稚園生活のなかで、進級時に新しいクラスに慣れていく過程を記録し、小学校に伝えることで、入学後の援助の参考になります。入学当初を安定的にすごすことで、子どもの学習意欲などの広がりにもつながります。
解釈して記録する
幼稚園教育要領にある5領域(心身の健康・人との関わり・身近な環境との関わり・言葉の獲得・感性と表現)のねらいを視点とし、あるいは保育者自身が自分で視点をみつけ、子どもの全体像を、短くわかりやすい言葉で記録するように心がけます。
子どものさまざまなエピソードを総合的にとらえて解釈したものを記しましょう。
好きな活動を記録する
どんな子どもなのか、ありのままの姿を伝えることが幼児指導要録の役割です。
子どもの好きな活動やあそびが記録されていると、その子の興味や関心が伝わりやすく、そのときの表情やようすも書き加えると、どんな性格の子どもなのかがイメージしやすくなります。
5領域のねらいに沿って今後の課題に触れる
今までの記録だけではなく、5領域のねらいにおける今後の課題についても記入し、子どもの成長への期待をこめて小学校へ送り出します。
園から小学校へ継続して育ちを見守ることができ、入学後に育ちを援助する際の参考になります。
1年の発達の成長を記録する
学年のはじめと比較して著しい発達がみられたものに○印を記入します(園によって書式が異なります)。
ほかの子どもとの比較や一定の基準に対する達成度などによってではなく、その子なりの発達状況をとらえることが大切です。
次のページではどのように「記録」するのかをご紹介します。
どんなふうに「記録」する?
気づいたことは、なんでもすぐにメモにする
日々の保育のなかで、保育者が「あ、おもしろい」「○○ちゃん、すごい」などと感じたことを、すぐにメモしておくことで、できごとを一つひとつその場で「5領域の視点」やこれまでのようすに照らし合わせて考え、メモすることは大変なので、その場ではあまり深く考えずにメモしておきましょう。
また、子どもたちの会話や発した言葉は、そのままで書き留めておくようにしましょう。覚えているつもりでも、時間がたつと、保育者の観念が入ってしまい、子どもたちのそのままの姿や思いを残すことができなくなってしまうからです。
小さなメモとペンをポケットに入れておき、サッと取り出して書けるようにしておくとよいでしょう。
メモするときには、日にち、時間、メンバー、保育者の感想を書いておくと、あとから読み返したときに状況をさまざまな観点から検証できます。
長いスパンで経過やつながりを見るうえで役立つこともあります。
また、子どもの行動の見方がわからないときでも、保育者が面白いと感じたことは何でもメモしておくとよいでしょう。
変化はどこ?と考える前に、単純に保育者が面白いと思ったことをメモすればいのです。
写真を活用するのも、ひとつの手です。メモに書くよりも手軽な場合もあります。まさに百聞は一見にしかず、です。
メモの内容を振り返り、日々のまとめを記録する
保育中にメモした内容から、日々のまとめを記録していきます。
一人ひとりのようすや成長を個別の連絡帳に記録し、それを保護者に渡すことで子どもの育ちを共有してみるのもよいでしょう。
クラス全体のようすや数人単位でのできごとなどのエピソードは、保育者個人のまとめノートに記しています。
活動計画と照らし合わせてどうだったか、子どもの昨日までのようすと比べてどうだったかなど、振り返りながら書いていけるとよいですね。
これらの記録から、長いスパンでの子どもの成長を改めて振り返ることができます。
それが学年の終わりには、保育所保育指針や幼稚園教育要領を目安に、指導要録や保育要録へとつながり、次の学年の担任へと引き継がれる資料になります。