カード支援をはじめる前に
発達に課題のある子は、自分の多いや要求を人に伝えることが苦手なので、保育者はその子が何をしてほしいのか、何をいやがっているのか、どうしてほしいのか、ということがわかりにくく、接し方や関わり方の難しさを感じていることは少なくないですね。
しかし、子どもの要求がわかれば、何をしてあげればよいのかがわかり、接し方も見えてきます。
カード支援は、子どもが自分の「要求」を伝えられるしくみをつくる支援です。
その要求のしかたとは、複数の絵カードが入ったカード帳を見せて、子どもが欲しいものややりたいことが描かれたカードを選ばせる、あるいは、欲しいものややりたいことがあるときは、子どもが自主的にそのカードを持って保育者に渡すという方法です。
このしくみを定着させるためには、まず、子どもがカードを要求を伝えるための道具であることと、その使い方を理解する必要があります。
理解する方法について、ご紹介します。
カード支援の3つのステップ
子どもの好きなものが描かれたカードを作る
園生活のなかで、子どもにお気に入りの場所や好きなおもちゃができてきたら、まず、その場所やおもちゃの絵や写真を使ってカードをつくりましょう。
興味のあるものが示されているカードに、子どもは関心を示すので、練習用カードとしては最適です。
そのためには、子どもが何を好きで、何に関心をもっているのかを、日々、よく観察しておくことが大切です。
カードを活動を重ねて、カードの意味を理解させる
ミニカーが好きな子ならミニカーの絵のカードを見せながら、「ミニカーであそぼう」などと声をかけて、いっしょにミニカー」を取りに行き、カードと実物を見比べさせてからあそびます。
これを繰り返すと、カードとあそび(活動)」がつながり、ミニカーの絵カードを見れば、ミニカーであそべるというイメージを持てるようになります。
慣れてきたら、少しずつカードの数を増やしていきましょう。
子ども自身がカードを使って、思いを相手に伝えられるようにする
カードを見て、活動の意味をイメージできるようになったら、「ミニカーであそびたいときは、このミニカーのカードを先生のところにもってきてね」と伝えます。
そして、子どもがカードをもってきたら、必ずその要求に応えます。
カードを渡せば、自分の思いを伝えられ、要求が叶えられる、という経験を繰り返すことで、子どもはカードの有効な使い方を身につけていきます。
カード支援は、子どもが要求を伝えるためだけでなく、」保育者が指示を出したり、ルールを注意喚起するためのツールとしても使用できます。
子どもに小さな保育の流れが定着し、さらにカードの意味や使い方も理解してきたら、さらに一歩進めたスケジュール支援の指導をスタートさせましょう。
スケジュール支援は、2枚以上のカードを並べ、子どもに「これをやったら、次はこれ」といった活動の流れを示すことで、子どもが先の見通しを持ちやすくするための支援です。
発達に課題のある子は、想像力を働かせて、次の活動の予測を立てることが苦手なので、先の見通しが持てず、常に心に不安感を抱きながら生活しています。
活動の切り替えがうまくいかなかったりするのも、先の見通しが持てない不安感によるものと考えられます。
スケジュール支援によって、子どもは先の見通しが持てるようになります。
これによって、子どもは自分で活動の流れを理解し、納得してみずから動けるようになるだけでなく、「これをしたら、楽しい○○の時間だ」というように、活動に期待感を抱けるようにもなります。
生活にうまくスケジュール支援を取り入れ、子どもの不安感を軽減し、期待を持って活動に参加できるようになることをめざしましょう。
スケジュール指導の4つのステップ
保育の流れに沿いながら、活動にカードを重ねる
子どもの得意なことや好きなことを軸にして定着させた「小さな保育の流れ」に、カードを重ねます。「おやつ→コップの片付け」という流れなら、「おやつ」カードと「コップの片付け」カードの2枚を用意します。おやつのときは、おやつカードを見せてからおやつを食べます。
食べ終わったら、コップの片付けカードを見せ、「コップを片付けるよ」と声かけをします。
2枚のカードをつなげて、活動の流れをカードで示す
カードと活動の意味が理解できるようになってきたら、2枚のカードをホワイトボードなどに並べて貼ります。
「おやつを食べたら、コップを片付けようね」などと、保育の流れを確認しながら、2枚のカードが活動の流れを示すことを教えていきます。
複数枚のカードを使ってスケジュールを作る
2枚のカードを提示すると、それが「○○をしたら、☓☓をする」という活動の流れを示すものだと理解できるようになったら、少しずつカードの枚数を増やしていきます。
カードが3枚、4枚とつながっていくと、立派なスケジュール表になります。
スケジュール帳を応用した、手順表も活用する
複数のカードを並べることで、「活動の流れ」を示すスケジュールを子どもに伝えることができますが、同様に、「活動の手順」を示す手順表を作ることもできます。
「朝のしたくの手順」「給食の準備の手順」「洋服のたたみかたの手順」などを示すことで、保育者がつきっきりで支援をしなくても、子どもはひとつひとつの手順を確認しながらひとりで活動に取り組めるようになります。