平成29年3月31日に告示された保育所保育指針の内容をおさえておきましょう
保育所保育指針が平成20年に告示化されて、10年になろうとしています。
保育所保育指針は、国による正式な指針文書となり、各保育所はどのような原理と目標をもって子どもたちを保育していくのかということをまとめた、全体的な計画を作成することとなりましたが、この全体的な計画を作成する際の指標となり、また日頃の保育実践の計画や反省、修正の指針となるものです。
この度、保育指針が告示化されて10年が経とうとしている平成30年に、新しい保育指針が施行されることとなりました。
今回の改定には、重要なポイントが大きく5点あります。
その5点について、順にご紹介していきます。
保育所は幼児教育を行う施設であると初めて明記
保育所は保育、幼稚園は教育、認定こども園は保育と教育という区分が、これまでは法的にされていました。
しかし、保育所や幼稚園、認定こども園は根本的には幼児教育機関であり、子どもを育てるという機能としては施設が異なっても、指導や取り組みの方向性は同じであるということが、今回の保育所保育指針で盛り込まれることとなりました。
今回の改定のなかで、保育所は「幼児教育を行う施設」であることが明記され、「幼児教育を行う施設として共有すべき事項」が明記されていることは、注目すべきことです。
これは、「3歳以上、1日4時間」の部分は、保育所は幼稚園や認定こども園と同じ教育を行っていくことを示しています。
保育所で行う教育では、「知識及技能の基礎」、「思考力、判断力、表現力等の基礎」、「学びに向かう力、人間性等」という育みたい資質と能力の3つの柱を育てていきます。
この資質と能力の3つの柱と併せて示されている「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を意識しつつ、保育と教育をしていくことが盛り込まれています。
全体的な計画をしっかりとつくり、実践のなかでの子どもの育ちや課題をしっかりと見抜き、そのうえで全体的な計画を柔軟にし、反省や実践、工夫を続けて、幼児教育を行う施設として機能させていきたいですね。
保育の質を向上させるためのポイントを明記
保育のねらいや内容については、これまでの保育所保育指針にも記述されていたことですが、今回の改定により、保育の質を向上させるためのポイントが書かれるようになりました。
特に、0歳児の保育のねらいや内容、1歳以上3歳未満児の保育のねらいや内容についてのポイントが明記されたことを押さえておきましょう。
また、幼児教育において、非認知的能力を育むことが人間の一生にとって重要な意味をもつことが次第に明らかになってきていますが、その非認知的能力の育ちのためには、乳幼児からの丁寧な対応、応答的な姿勢、温かい受容などが大事であるといわれています。
そのことが保育所保育指針にも盛り込まれています。
乳児、1歳以上3歳未満児の保育に関する記述の充実
これまでの保育所保育指針では記述が少なかった、乳児(0歳児)と1歳以上3歳未満児(1歳・2歳)についての記述が充実しました。
社会の変化に伴い、0歳児~2歳児の保育所の利用率は急速に高まっています。
このことを受けて、保育の内容の項目に、「乳児保育にかかわるねらい及び内容」と「1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容」が新たに盛り込まれました。
非認知的能力の基礎を育む
幼児教育について、近年の研究によって乳児期から幼児期にかけて養護的なアタッチメント経験を繰り返すことで非認知的能力の基礎が育まれるということがわかっています。
子どもの教育は可能なかぎり早くから始めることが、費用がかからないこと、また、その教育が子どもの成長に与える効果が大きく、持続的であることが指摘されています。
非認知的能力とは、失敗してもあきらめずに工夫してやり遂げる力、いろいろなことに挑戦する力、我慢をしたり自分をコントロールしたりする力などのことで、基本的信頼感や自己肯定感ということもできます。
また、非認知的能力に対して、認知的能力という言葉もあり、こちらは記憶できる、知識を正確に理解するなどの学力に相当する力のことをいいます。
身についているのかどうか目にみえやすい能力ともいえ、この能力ももちろん大事なので、認知的能力と非認知的能力の基礎を育む保育を心がけていきましょう。
健康及び安全の記述の見直しについて記述
3つめのポイントは、新しい保育所保育指針の第3章にある「健康及び安全」の内容です。
子どもの育ちをめぐる環境の変化に伴い、内容の見直しが図られることとなりました。
保育所は子どもが長い時間、そこで生活する施設なので、環境や衛生管理、アレルギー対策、食育などについて記述がなされています。
地震や津波などの災害時に、保護者の引き渡しなども含めて的確に対応する訓練や防災の必要性についても触れられています。
アレルギー体質の子への配慮等をより丁寧に
子どもの健康支援には、いくつか記述内容に変更が加えられました。
これまでの保育所保育指針でもアレルギー体質の子どもへの対応は記述されていましたが、今回の改定では、保護者と連携することが新たに加えられ、より丁寧な対応をすることが強調されています。
食育のさらなる充実
前回の保育所保育指針の改定では、保育所における食育が重視されましたが、今回の改定でも食育を重視する方向性は変わっておらず、さらなる食育の充実を図ることとされました。
このことの背景としては、健康維持のためには日々の食事が大切であるということもありますが、それだけでなく、和食が世界遺産となったことにみられる日本の食文化の見直しということがあります。
日本の食文化への国際的評価が高まっている今日、子どものころから日本の食文化に慣れ親しんで、食の大切さを学べるよう指導していきましょう。
さらに、食育の指導は、子どものみならず、その保護者にも伝えることも含まれています。
災害への備えについて新たな記述が
保育所保育指針の前回の改定は平成20年でしたが、今回の改定までに東日本大震災が起こり、その後、日本各地で豪雨や地震による予測できない災害が起こってきています。
このような事態を踏まえ、今後に備えて保育所の近辺で大きな災害が起こることを想定した備えや安全対策をすべての保育所できちんと行うこととしています。
具体的な内容としては、火災や地震などの災害に備えて緊急時の対応の具体的な内容や手順、職員の役割分担、避難訓練計画などに関するマニュアルを作成すること、また、避難訓練については、自治体や保護者との連携の下に行うなどの工夫をすることが定められています。
子育て支援の必要性について記述
前回(平成20年)の保育所保育指針の改定により、保育所が保護者の育児とその家族への支援を行うことが義務あるいは努力義務となり、保育所が行う子育て支援は、さまざまな活動となっていきました。
このような活動を踏まえ、今後、地域に開かれた子育て支援、地域の関係機関等との連携を目指し、地域の子育て支援をおこなっていく旨が強調されています。
保育士の研修の重視とキャリアパスの明確化
保育士がキャリアパスに応じた研修体系に基づいて資質や専門性の向上を図れるようにするため、研修の重要性が強調されています。