子供の発達を見据えて保育をすることは、誰でもできることではありません。
集団生活のなかで欠かせないコミュニケーションの力。その力の土台となるのは、人の話を「聞く」力と、自分の思いを伝えるための「話す」力です。
そんな大切な力を育むために必要な保育者の関わり方について考えて生きましょう。
聞く力を育むための保育者の取り組みポイント
まずは子どもの話をじっくりと聞くことから
人の話をきちんと聞ける子になってほしい。
そう願うなら、まずは保育者が子どもの話しにじっくりと耳を傾けることが必要です。
子どもは、「この先生にこの話を聞いてほしい」という思いを持って話をしてきます。
ですから、保育者が自分の話に興味をもって、楽しそうに話を聞いてくれるのは、子どもにとってとても嬉しいことです。
話したいことを聞いてもらえた、という喜びは、充足感や自信だけでなく、人の話にじっくり耳を傾けられる心のゆとりにもつながります。
話したいことを話しきって満足する体験が、、「今度はこの人の話を聞こう」という意欲や態度へと発展していきます。
子どもが話を集中して聞ける環境を整えましょう
おとなでも自分の関心のない話題や、理解できない外国語の話には、集中し続けることは容易ではなく、むしろ苦痛に近いものになるでしょう。
これは子どもにも同様のことがいえることです。
幼ければ幼いほど集中できる時間が短く、語彙はもちろん、生活体験も少ないので、理解できる語や興味をもって耳を傾けられる話も限られます。
聞く力を育てるには、子どもみずから「聞きたい」と思える話しと、耳を傾けていられる環境を用意し、集中して話を聞く体験を重ねていくことが大切です。
子どもが興味をもてる話を、わかりやすい言葉で簡潔に伝えるようにしましょう。
絵本の読み聞かせは、子どもの「聞く力」や「話す力」をはぐくむことにつながります。
絵本には、子どもがじっくり集中して聞ける絵本と、読み手とやりとりを楽しめる絵本があり、前者は「聞く力」、後者は「話す力」をはぐくむのに適しているといえます。
じっくりと集中して聞ける絵本は、絵がしっかりと描き込まれていて、見ているだけで絵本に引き込まれていくようなものがよいでしょう。
やりとりを楽しめる絵本は、いっしょに絵を眺めたり、指差しをするなど、保育者とのかかわりで楽しさが広がるとよいですね。
話す力をはぐくむための保育者の取り組みポイント
子どもの話は遮らず、最後まで聞きましょう
話の途中で「そうじゃなくて」「でも・・・」といった否定的なことばで遮られると、子どもは「話したい」という気持ちをなくしてしまいます。
たとえ反対の意見を伝える場合でも、子どもが話し終えるまでじっくりと耳を傾けましょう。
そして、頭ごなしに否定のことばを返すのではなく、「○○くんは、そう思っていたんだね」と、子どもの思いを受容したうえで、「でも、先生は××だと思うよ」などと話をつなげましょう。
子どもの話しをせかしたり、言い違いを指摘したりしないようにしましょう
「あのね、あのね」ばかりで話が先に進まない、うまく話を伝えられない、といったときに、「何を話したいの?」」「早く話しなさい」などと話をせかすのはよくありません。
ことばがうまくでてこないときは、次のことばが出やすくなるようさりげなくフォローしましょう。また、「ヘプリコプターが飛んでいるよ」などことばのまちがいがあったときは、「ヘプリコプターじゃないよ」と指摘するのではなく、「ほんとうだ!ヘリコプターが飛んでいるね」と正しいことばで返答するようにしましょう。
子どものことばを聞きながら、話を聞きましょう
相手が何かほかの作業をしながら、話を聞いていたり、視線があちこちに移るなど、気もそぞらな態度であったりすると、話す側はどんどん話す気がなくなっていきます。
基本的なことですが、まずは話している子どもの目を見て話を聞くようにしましょう。
そして、相づちを打ちながら話を聞く、「○○くんは××と思ったんだね」「△△したんだね」などと子どものことばを繰り返しながら話をきく、ということも大切です。