幼児の自我はいつから?自我の芽生えの心理学
自分と他者との違いがわかるようになるころから、子どもは人とのぶつかり合いを経験していきます。
まだ、ことばでうまく気持ちを伝えられないため、ときに大泣きしたり、だだをこねたり・・・という行動で、保育ぼ者が困る場面もあるでしょう。
しかし、こうした行動を保育者が受け止めたり、言語化したりすることで、子どもは葛藤を乗り越え、ことばの発達とともに、他者への思いやりの気持ちが育まれていきます。
1歳や2歳で起こるさまざまな発達過程をふまえて、ことばと心の育ちについてお伝えしていきます。
乳幼児のことばと心の育ち
0歳
自我の芽生え。大人に誘われると「イヤイヤ」をしたり、何に対しても「ダメ」と言ったり、否定する態度が増えてきます。
1歳
モノの取り合いなど、自分以外の他者にも気持ちや心があることにまだ考えが至らず、自分の気持ちを優先するために起こるトラブルが多発します。
2歳
「ブーブー」「にゃーにゃー」といった、聞き取りやすく発音しやすい擬声語や擬態語を頻繁に話すことから始まり、「わんわん、いた」「おはな、きれい」など、それまで別々に言っていた単語がつながり、二語以上の文を話すようになります。
3歳
いつまでも泣いたり、体全体で怒ったり、すねたり・・・。自分でうまくことばにできないモヤモヤをこうした行動で示します。ときには「○○したい」「○○はイヤ」などという言動はわがままにみえることもありますが、わがままと自己主張は違うものです。
また、「なんで?」という質問が増えてくるのも、このころです。理由や結果に関心が出てくるのですね。
ことばの発達とともに、自分の思いや「つもり」を、少しずつことばで表せるようになってきます。
「イヤイヤ」「ダメ」は自己主張の始まり、自我の芽生え
行動範囲が広がるとともに、「イヤイヤ」が増えてくる時期。
困った場面や行動も多くなりますが、自己主張は子どもの成長に欠かせないものです。
1歳半から2歳ごろの子どもは、「お片付けしてお部屋に入ろう」などと誘うと、「イヤ」と返すことが増えてきます。
「そっちは危ないから、ひとりで行かないで」と注意すれば、わざと行こうとし、おもちゃを投げるのを「それはいけない」と注意すれば、怒って大泣きします。
「イヤ」「ダメ」という拒否することばが増え、0歳児のころとは違う反抗的な態度に、悩む場面も増えるでしょう。
しかし、自我の目覚めは、自分なりの心の世界の誕生ともいえます。
「わたしはこうしたい」「ぼくはこれが好き」という意思が明確になってくると、自分がこの世の中で何よりも大切な存在であることに気づき、自我に目覚めるのです。
これは子どもにとって、大きな成長でもあり、子どもは、大好きな保護者や保育者の提案を拒否することで、大人とは違う自分を主張するようになってきたのです。
大人の言うことはわかっているけれど、「今は大人の言うとおりには行動したくない」自分が出てきたのでしょう。
そうすると、「いちいち命令しないで」「自分で決めたの」などといった思いを「イヤ」「ダメ」ということばで表現し始めます。
「イヤ」という自分の主張がどこまで通るのか、ギリギリまで大人を試すこともあります。
思い通りにならないときは、その悔しさや怒りを、いつまでも泣いたり、だだをこねたりして体中で表現します。
こういった行動すべてが自我の芽生えであり、自分なりの心の世界が誕生すればこそ、他者とのぶつかり合いを体験することになるのです。
身の回りにあるものを知覚し、考え、行動する主体者としての自分を意識していくことや、自分を意識して自己主張し、自分にこだわる心の動きや他者の自我とぶつかりながら、折り合いをつけていく力が培われていくのです。
なぜ1歳や2歳で自我が芽生えるのか
子どもは1歳を過ぎて立ちあがり、歩き始めると、自分から外の世界を探索し始めます。
今までよりも自由になった「その手」で、外の世界から事実をつかみ取ろうと行動し始めるのです。
この発達過程があることが、1歳や2歳で自我が芽生える理由のひとつであると考えられています。
今までのように大人に頼らなくても、自分で行きたいところに行けるとわかることで、「行動の主体者としての自分」を実感するのでしょう。
歩き始めた子どもがもっとも好きなことが「バイバイ」です。
これは、愛着関係ができている保護者や保育者を安全基地にして、ひとりででかけていく自立を意味します。
「バイバイ」と言いながら、大人から離れては戻ってくることを繰り返し、徐々にその距離や時間を延ばすうちに、やがて「ワンワン見てくるね」などと、出かける目的や意味を発見します。
特定の大好きな大人を安全基地に、そこから「ひとりで出かけてみたい」と思う自立心こそが、自我の芽生えなのです。
自分が誰なのかに気づく
1歳代は一語文の獲得が目覚ましく、次々に意味のあることばを言い始めます。
ものに名前があることがわかってくると、人にも名前があることが理解できるようになり、自分と大好きなママは違う人間であることがわかってくるのです。
そして、自分の名前を手掛かりに、状況や時間を超えていつもいる「自分」を認められるようになります。
「自分はほかの誰でもない、自分なのだ」とわかり、「自分なりの心の世界」を宣言するようになるのです。
「今までみたいに赤ちゃん扱いしないで」という要求も増え、自分にこだわる心の働きが育っていきます。
記憶力や想像力が発達することで、自分の「つもり」を意識する
「わたしはこうしたい」「わたしはこれが好き」という意思が明確になるにつれて、世の中の何よりも大切なものとして、自分があることがわかっていきます。
想像力や記憶力も発達していくるので、「自分はこうしたい」「こうするつもり」という自分の「つもり」をいつまでも意識化できるようになり、自分の要求や「つもり」を通そうとします。
それこそが自我の芽生えです。