子どもを叩く、体罰はダメな叱り方です
子どもの育ちには、ときとして、叱ることも必要なことです。
しかし、多くの保育者は、その難しさを感じることもあるでしょう。
そんな「子どもを叱る」ことについて、叱りすぎて後悔しないよう、叱り方の注意点にポイントをおいて、子どもの心にしっかりと伝わる叱り方について考えてみましょう。
叱ることって難しい?
日々、子どもと接する保育者には、子どもを褒めたり、叱ったりする場面がとても多くありますね。
保育者の中には、叱ることは難しい、褒めることよりも叱ることが難しいと考えている人も多いのではないでしょうか?
何度叱っても同じことを繰り返す子どもがいると、自分の思いが子どもに届いていないのではないか、自分の叱り方が悪いのではないかと不安に思ったりすることもあるかもしれません。
子どもと接する中では、その叱り方に悩んだり、叱ることに戸惑いを感じたりすることもあるかもしれません。
しかし、叱ることは、褒めることと同じくらい、子どもをよりよく育てるために欠かせない、とても大切な行為です。
まずは、「これは絶対にダメ」「こういう子になってほしい」という自分自身の保育観を持ち、それを決してぶれない軸とすることが大切です。
そのうえで、叱ることを恐れず、叱るときはしっかりと叱り、伝えるべきことは何度でも繰り返し伝えられる保育者になれるよう努めていきましょう。
年齢や発達に合わせた叱り方を
似たような状況で叱る場合でも、子どもの年齢や発達を考え、その子にとってもっとも伝わる伝え方、叱り方をすることが大切です。
ことばの発達が未熟な3歳ころまでは、「どうしてしてはいけないのか」という理由を伝えようとしても、まだ理解力が不十分です。ことの良し悪しを端的に伝えることを重視しましょう。
そして、ことばは極力短くし、表情やリアクション、声の大きさやトーンで、子どもに「先生が怒っているナ、悪いことをしてしまったんだナ」と気づかせることが大切です。
ことばの理解力が増す5歳前後になったら、「どうしていけなかったのか」を子どもがしかりと考えられるように導いていきましょう。
どうしていけないのか、その理由に子ども自身が気付けるよう、相手の立場に立たせたり、相手の気持ちを考えさせたりしながら、保育者がいっしょに考えることが大切です。
いちばん伝えたいこと=やってはいけないことは、ことばで端的に伝えましょう。真剣な表情や大きな声、手で大きく「×」をつくって見せるなど、ことば以外の方法を工夫してもよいでしょう。
要点をしぼって短いことばで伝える
叱るときには、必ず保育者から子どもに道徳的な善悪や集団生活(社会)のルールを教えるためのメッセージがあります。
しかし、保育者の伝えたい思いをすべて子どもにぶつけても、子どもがそれを理解できなければ意味がありません。
特に年齢が高い子どもの場合、あれもこれも伝えたい、こういうことに気づいてほしいという保育者の思いから、つい「○○だよね、○○だね、○○だからね」というような、理詰めでしかもだらだらとした話し方をしてしまいがちです。
しかし、これでは、話の主旨が子どもに伝わりません。
伝えたいことは、要点を1つか2つにしぼり、ゆっくりと語りかけるようにしましょう。
ひとつのセンテンスを短く簡潔に話すことを意識するのもよいでしょう。話が長く、次から次へと話の論点が変わっていくような話し方だと、子どもは何の話をされているのか、わからなくなってしまいます。
叱りすぎて悩まないために、気をつけたい叱り方
ついつい、こんな叱り方をしていないか、自分の叱り方を振り返ってみましょう。
感情に任せた叱り方
「さっきも言ったよね?」「何度も言っているでしょう」ということばが、保育者がイライラしているからこそ出てしまうことばです。
子どもに手をあげることは言うまでもありませんが、感情をぶつけて力で子どもを制する叱り方は、子どもに恐怖心を与えるだけで、善悪の本質を教えることにはなりません。
子どもは一度言ってできるようにはなりません。何度も繰り返し伝え、教えていくことが大前提です。
そう考えれば「また同じことをやっている」と、保育者がイライラすることも減るのではないでしょうか。
子どもができないとき、できていないときは、「こういうときはどうするんだっけ?」と問いかけながら、クラスの約束の確認や「なぜいけないのか」について話すことで、「前にも言ったよね」ということばを使わなくても、子どもに自分の過ちを気づかせることができます。
もし、子どもができないとき、できていないときに、カッとしてしまいそうなときは、子どもの手を握って話をするなど、あえてスキンシップを交えながら話をすると、保育者自身の気持ちも落ち着き、子どもも素直に保育者のことばを聞けるようになります。
人格を否定する叱り方
「何度言ってもわからない子」「どうしようもない子」「悪い子」といった、子どもの人格そのものを否定する叱り方はよくありません。
成長過程にある幼い子どもが、道徳やルールに反して好ましくないことをするのは、悪意があるのではなく、まだ善悪の判断がついていないから。
今はその善悪を学んでいる最中です。よくないことをしても、その子自信を責めるのではなく、やってしまったよくない行為を指摘し、どのようにすればよかったのか、好ましい行為を具体的に教えていくことが大切です。
また、子どもの行為を頭から否定せず、その行為に至った子どもの心に共感することも大切です。
そのうえで、どう行動すればよかったのか、何と言えばよかったのかを具体的に示しましょう。
フォローのない叱り方
子どもの気持ちに寄り添い、どんなに理想的な叱り方ができたとしても、大好きな保育者なら叱られらた子どもの心には、大なり小なりモヤモヤした気持ちが残るものです。
この気持ちをそのまま放置してしまうと、子どもと保育者のあいだに距離ができてしまうこともあります。
叱ったあとは、手を握る、抱きしめるなどのスキンシップや、ひざにのせて「わかったよね?」と優しく声をかけるなどのフォローを入れましょう。
そして、叱られたことができるようになったときは、「先生がお話ししたこと、ちゃんと覚えていてくれたね。嬉しいよ」とたくさん褒めましょう。
「勝手にしなさい」「好きにしなさい」など、突き放したり、吐き捨てたりすることばは禁止です。
そのあと、子どもはどうすればよいのかわからないので、叱られたことを成長につなげることが難しくなります。
また、長々と説教を続けると、どんどん意固地になってしまう子どもには、クールダウンのために少し考える時間を与えることも必要です。
そんなときは、「少し自分で考えてみて」と言って離れるのもよいでしょう。
もし、子どもからの報告がなければ、必ず「どうだった?」と声をかけ、フォローしましょう。
以前のことを引き合いに出す叱り方
何度注意しても、同じことを繰り返す子どもには、つい「昨日も同じことを言われたよね?」と言ってしまうこともありますね。
もちろん、それを子どもに気づかせ、再度、反省させたり、考えさせたりすることは悪いことではありません。
しかし、「あのときは、○○くんが××したから・・・」「あのときだって、○○ちゃんが・・・」というように、昔の話が話題の中心になってしまうことはよくありません。
子どもはいま現在を生きている存在です。
「あのとき」の話をされても、心に響くものはありません。
昔の話を引き合いに出して、だらだらと叱るのはやめましょう。
ただし、以前のことを引き合いに出して叱るのはよくないですが、「あのときはどうだった?」と子どもに思い出させ、再度、保育者といっしょに考える機会をつくることは大切です。