小学校就学を控えた、発達障害のある子どもの保護者を支援するには?
発達に課題のある子を持つ保護者にとって、小学校進学は不安がとても大きいものです。子育てのパートナーとして、園や保育者は、どのように保護者を支援していけばよのかを、具体的な支援の形を示しながら、ご紹介します。
就学支援の柱は、保護者の不安を取り除くこと
発達に課題のある子の保護者は、子どもの進学を前に、「小学校の先生はきめ細かい支援をしてくれるか」「勉強についていけるか」「友だちにいじめられないか」など、さまざまな心配や不安を抱えています。
進学先の小学校、あるいは進学そのものに保護者が不安を感じていると、それは子どもにも伝わり、子どもの不安を増長させるため、小学校生活のよいスタートを妨げる一因になります。加えて、保護者が小学校に不信感をもっていては、子どもの育ちを支えていくには欠かせない、家庭と学校の連携もうまくいかなくなってしまいます。
保護者が安心、納得して子どもを小学校へ送り出せるよう、保護者の進学に対する不安をていねいに取り除いていくことこそ、保育者が行う就学支援の最重要課題になります。
では、保育者は保護者に、具体的にどのような形で子どもの就学支援を行っていけばよいのでしょう。
就学支援の柱として、「進学先の学校、あるいは学級の選択」「子どもの育ちをつなげるための小学校との連携」という2点を挙げることができます。このふたつの柱について、次から、詳しくみていきましょう。
小学校、学級の選択に迷う保護者への支援
近隣地域の小学校、特別支援学校の情報を把握する
発達に課題のある子は、その進学先として通常の小学校か、特別支援学校のいずれかを選択することになります。さらに、通常の小学校に進学する場合は、通常の学級か特別支援学級(以下、支援学級)のどちらかに在籍するかを考えなければなりません。保育者は、通常の小学校の「通常の学級」と「支援学級」、そして、「特別支援学校」、それぞれの特徴や選択した場合のメリットやデメリットについて説明できる知識を得ておきたいものです。
しかし、保護者がいちばん知りたいのは、このような一般的な話より、近隣地域の小学校に関する固有の情報です。
支援学級や通級指導教室を設置していない学校もあり、また、支援学級と通常の学級の交流が盛んな学校、そうでない学校など、小学校によって、特別支援教育への取り組みには大きな差があるので、保護者自身が小学校を訪れ、比較検討するのが理想です。場合によっては、園が保護者を学校につなげる配慮が必要なときもあります。
小学校の選択や学級の選択に迷う保護者への支援とは
通常の学級
障害のない、健常な子と生活を共にするなかで多くの刺激があり、成長や発達によい影響があることを期待できます。しかし、個別指導には限界があるので、生活や勉強についていくことが難しくなる場合もあります。
特別支援学級
教科や活動によっては、通常の学級との交流もしながら、個々の発達や課題に応じたきめ細かな個別の指導を受けることができます。
支援学級に入ると、「周囲から偏見の目でみられる」「勉強が遅れる」「同じ小学校に通う兄弟が肩身のせまい思いをする」といった心配から、支援学級の選択を躊躇する保護者も少なくありません。
通級指導教室
通常の学級に在籍する障害のある子どもは、通級指導教室に週に1回ほど通って、発音や話し方、ソーシャルスキルトレーニングなど、障害の状態に応じた、より専門的な指導を受けることができます。在籍する小学校に通級指導教室がない場合は、他校に設置された通級指導教室に通うこともできます(自治体により異なります)。
特別支援学校
子どもの実態に即した個別の指導計画に基づいて、手厚い指導を受けることができます。また、小学部から高等部まで大きな環境変化もなく、一貫した指導を受けることができるので、環境の変化が苦手な子も、学童期から青年期にかけて安定した学校生活を送ることができます。
進路選択に悩む保護者の背中を、最後は押してあげられる保育者になれるといいですね
就学先を決める際は、通常の学級を希望する保護者と、特別支援学級をすすめる園や専門機関というように、お互いの意見が平行線をたどることも少なくありません。この場合、子どもの実態より保護者の思いを優先して通常の学級を選択すると、入学後、生活や勉強についていけない、友だち関係がうまくいかないなど、子どもがつらい思いをするケースも出てきます。
保育者や療育の専門家からみて、通常の学級では難しいと判断する場合は、保護者が子どもにとって最善の学級を納得して選択できるよう慎重に話し合いを重ねることが必要になるでしょう。
しかし、それでも保護者が通常の学級をあきらめきれずに選択に迷っていたら、保育者から「それでは、通常の学級でがんばってみましょう。小学校にはしっかりと申し送りをするので、よいスタートが切れるよう、今後は小学校の先生も交えた話し合いの場を設けていきましょう」と、保護者の背中を押すことばをかけてほしいと思います。
子どもの成長を責任をもって見届けるのは、保護者であるということを念頭において、考えていくことが大切です。