乳幼児の病気や感染症を理解し、しっかりと対応しましょう。予防接種をするよう指導することも。
乳幼児はさまざまな感染症や病気にかかりやすく、保育者が気をつけることや知っておきたいことは多くあります。
保育における衛生を保ったり、保護者に予防接種を促すなどの対応をしていきましょう。
また、子どもからウイルスや菌をもらい、保育者が感染症や病気になることもあります。
感染症や病気になってしまったら仕方がないですが、できる限り予防していきたいものですね。
プール熱
どんな病気?
夏風邪の一種で、アデノウイルスに感染すると起こります。夏に多いですが、冬から春にも発症することがあります。
また、プールの水を介して感染することもあることから、「プール熱」と呼ばれることもあります。実際は、プールだけでなく、タオルの共用や唾液、鼻水、涙、便などからも感染します。
潜伏期間は5~7日ほど。
どういう症状?
38~39℃近い高い熱が出て、のどが腫れて痛み、咳や鼻水、リンパ節が腫れるなどの症状がでることもあります。
アデノウイルスには、いくつかの型があり、熱やのどの痛みに加えて、目が充血したり、目やにが多くなるといった目に強い症状がでるものは「咽頭結膜熱」といわれ、学校伝染病のひとつです。
症状がなくなってから2日たつまでは、登園停止になります。
園ではどのように対応する?
喉が痛む間は、刺激の少ない食事にし、脱水症状に気をつけて水分をこまめにとらせます。
園で気をつけたいのは、感染を広げないこと。アデノウイルスは感染後、患者の涙や唾液に約2週間、便に約4週間ウイルスが出続けます。
病気が治った子どもが登園してきてからも、しばらくは注意が必要です。
また、プールの塩素濃度が不十分だと感染が広がることがあるので、アデノウイルス感染症が流行しているときは、プールの塩素濃度にも注意しましょう。
規定通りの状態を維持できているか、再度チェックしておきましょうね。
バスタオルや手拭タオルなどのタオル類の共用は避け、毎日新しい清潔なものを用意しましょう。自宅でも、ほかの家族と同じタオルを使わないように伝えましょう。
子どもの便を処理するときは、処理後の手洗いと消毒をしっかりと。
クループ症候群
犬の遠吠えのような咳が出る、クループ症候群についてご説明します。
どんな病気?
クループ症候群は、細菌感染やウイルスによって、喉頭に強い炎症が起こります。
感染力は強くはないのですが、喉頭に炎症を起こしやすい子ども、一度かかってもまたかかる場合があります。
どんな症状?
最初はのどの痛みや発熱など、風邪と同じ症状ですが、やがて風邪の症状とは明らかに違う「ケーンケーン」という犬の遠吠えのような咳が、夜から明け方にかけて多くでるようになります。気道が狭くなり、呼吸をするときにゼーゼーと音がしたり、声帯の炎症のために声がかれてくることもあります。
まれに症状が悪化した場合は、呼吸困難やチアノーゼを起こすこともあります。
園での対応は?
特徴的な咳や呼吸の異常に気がついたら、すぐに保護者に受診をすすめましょう。
園で咳が多いときは、室内を加湿し、水分を十分に与えます。園にいる間に症状がだんだん悪くなってきたときや、呼吸困難が心配なときは早めに病院を受診しましょう。
呼吸困難の症状があれば、急いで病院へ
乳児にクループ症候群の症状が出たときは、すぐに病院を受診します。幼児でも、息をするときにのどや胸がへこむなど呼吸困難の症状がみられるときは急いで病院へ。
室内の湿度に注意し、水分を与えて
加湿器を使ったり、ぬらしたタオルを室内に干すなどして、加湿を心がけると呼吸が楽になります。水やお茶、スープなど、水分はたっぷり与えましょう。
風疹
熱と小さな赤い発疹が特徴で、予防接種がすすめられている風疹。
どんな病気なの?
風疹ウイルスが原因で、咳やくしゃみなどの飛沫感染でうつります。潜伏期間は2~3週間です。
風疹は子どもにとっては軽い病気ですが、大人が感染すると重症化しやすいため、保育者も注意する必要があります。
特に妊娠初期の女性が感染すると、胎児の耳や心臓に悪影響を及ぼすといわれています。
風疹は、国の法律で予防接種が定められた病気のひとつで、1~2歳の間に公費で予防接種を受けることができます。2006年4月から、麻疹(はしか)・風疹混合ワクチンとなりました。この混合ワクチンではなく、風疹単独ワクチンを受ける場合には自費になることもあるので注意が必要です。
予防接種を受けると、抗体ができるため、風疹にかかる可能性を非常に低くすることができます。まれに発症した場合でも、比較的軽くすみます。
どんな症状?
37~40℃近い熱がでて、同時に赤く小さな発疹が全身に広がります。他に、のどの痛みや鼻水、咳、リンパ腺の腫れといった、風邪によく似た症状が出ることもあります。
子どもに発症した場合の症状は軽いことが多く、熱は1~2日で、発疹も3~4日ほどで消えます。
ときには熱も発疹もごくわずかで、発症に気づかずに治ってしまったり、病院を受診しても診断がつかないこともあります。
園での対応は?
保護者には、子どもが風疹の予防接種を受けているかどうかを確認しておきましょう。
園で感染児が出た場合は、保護者や保育者にも感染の危険性があることを、掲示などで知らせるようにしましょう。
また、感染した子どもは医師に治癒証明書を書いてもらい、園に提出するまでは登園できませんので保護者に、そのこともきちんと伝えるようにしましょう。
水ぼうそう
全身にかゆい水疱ができる病気です。空気感染で広がりやすいので注意が必要です。
どんな病気?
水痘ウイルスに感染すると起こるのが、水ぼうそう(水痘)です。つぶれた水疱にさわったり、感染している子どもの唾液からも移ります。潜伏期間は2~3週間で、感染力が強いため、兄弟姉妹では高い確率で感染し、園でも短期間に集団感染に広がることもあります。
どんな症状?
全身に赤い発疹が現れ、しだいに数が増えます。発疹はやがてかゆみをもった水疱に変わり、水疱は3~4日すると黒いかさぶたになって治癒します。
発疹の数は症状により、全身にくまなく出ることもあれば、数個出て終わる場合もあります。
熱が出ることもあれば、まったく熱が出ない場合もあります。
園での対応は?
水ぼうそうが疑われる発疹を見つけたら、保護者に知らせ、早急に受診をお願いしましょう。
感染している子どもが出ている時期は、園児の皮膚の状態に、いつも以上に注意し、感染を広げないように換気なども心がけましょう。
また、1歳以上の子どもは任意で予防接種を受けることができます。
予防接種をしていても発症することがありますが、症状は軽くすむため、あらかじめ保護者に予防接種を勧めておくのもよいでしょう。
学校保健法により、水疱が出ている間は、登園停止となります。
すべての発疹がかさぶたに変わったあと、医師による治癒の証明書を園に提出してもらうまでは、登園できないことをあらかじめ保護者に伝えておきましょう。
おたふく風邪
どんな病気?
おたふくかぜは、流行性耳下腺炎ともいい、幼い子は症状がはっきりと出ない場合もあります。
ムンプスウイルスに感染すると起こる病気で、耳の下の耳下腺が「おたふく」のように腫れるのが特徴です。
咳やくしゃみなどで広がる飛沫感染や感染者との接触感染でうつり、潜伏期間は2~3週間です。通年ではやる感染症です。
幼児期は感染しても、軽い症状ですむことが多いのですが、思春期以降の人がかかると症状が重く、男性は睾丸炎、女性は卵巣炎を起こすことがあり、注意が必要です。
なお、一度かかると免疫ができ、二度と感染しません。
どんな症状?
両方、または片方の耳の下が腫れ、痛みを伴います。ひどくなると腫れがほおやあごの下まで広がることもあります。
腫れと痛みがひどい場合は、食べ物をかめない、飲み込めないなどの症状が出ます。
腫れと同時に38度前後の熱が出ることもありますが、ほとんど熱が出ない場合もあります。
3~4歳くらいまでの子は、感染していても特徴的な症状が出ないことも多く(不顕性感染と呼ばれます)、5~6歳から学童期になると比較的症状がはっきりと現れます。
特別な治療をしなくても通常、熱は数日で、腫れや痛みは1週間ほどで治ります。
園での対応は?
耳の下が腫れていたときはもちろん、腫れはそれほど目立たなくても「耳の下が痛い」「食べると耳やほおが痛い」と訴えるときはおたふくかぜの疑いがあります。保護者に子どものようすを伝えて、受診をすすめましょう。
痛みがあるときは、子どもが気持ちよさそうなら、濡らしたタオルなどで冷やしてもいいでしょう。
任意で予防接種を受けても
1歳をすぎると任意で予防接種を受けることができます(自費)。
まだ予防接種を受けておらず、園に在籍していたときに感染しなかった子は、小学校入学前に受けておくと安心です。
登園には治癒証明書が必要
おたふくかぜと診断された子どもは、学校保健法により登園が停止となります。
登園再開には耳の下やあごの下の腫れが完全にひいたあと、医師の治癒証明書を園に提出する必要があります。
気管支炎
どんな病気なの?
ウイルスや細菌に感染し、気管支で炎症が起こると「気管支炎」に、炎症が肺で起こると「肺炎」になります。
幼い子どもの場合は、風邪に引き続き炎症が気管支や肺に進み、気管支炎や肺炎になることがよくあります。
どんな症状なの?
気管支炎は、咳が続き、徐々に痰がからんだ湿った咳がでるようになります。
乳児に多い細菌気管支炎は、気管支の先の枝分かれ細くなった細気管支という部分に炎症が起こるものです。ぜーぜーと苦しそうな息をしたり、呼吸が速くなったり、ひどいときには呼吸困難や無呼吸に陥ることもあります。
肺炎は、発熱や咳に加えて呼吸が速くなる、不機嫌になって食欲が落ちる、ぐったりするなどの全身症状がみられます。
正確な診断はX線検査をしないとわかりません。
原因によってウイルス性肺炎、細菌性肺炎、マイコプラズマ肺炎に分けられます。なかでも、細菌性肺炎は急に高熱が出て、症状が重症化しやすく、入院治療が必要なケースもあります。
微生物のマイコプラズマに感染して起こる肺炎は、乳児には少なく幼児から小中学生がかかりやすいものです。
園での対応はどうする?
痰のからんだ咳が続くときや、呼吸が荒くて速い、ぜーぜーしているという場合は保護者に報告し、受診してもらいましょう。
呼吸時に鼻をピクピクさせたり、息を吸うとのど元の胸がへこむときは、呼吸困難が疑われるので病院での受診をさせましょう。
軽い咳や痰がからむときは、室内を加湿し、水分を少しずつこまめに与えましょう。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、夏風邪の一種で、夏に流行りやすい感染症です。
どんな病気?
感染者の咳やくしゃみ、便を経てクサコッキ―A群ウイルスに感染すると起こります。
潜伏期間は2~5日ほどです。
どんな症状?
急に38~39℃前後の高熱が出ます、のどの奥の結膜に小さな水ぶくれがたくさんできて、やぶれて潰瘍になると強い痛みを感じることが特徴です。
のどが痛くてうまく飲み込めないため、乳児がよだれが多くなったり、幼児では食欲がおちることが多くあります。
熱は数日で下がりますが、のどの痛みはその後も4~5日ほど続きます。
どのように園で対応する?
夏に急に高熱が出て、のどの痛みを訴える場合は、ヘルパンギーナの可能性が高いですが、正確な診断は医師でないとできないので、熱が高い場合は、必ず受診をすすめましょう。
元気だった子どもが、突然発熱する場合もあります。
園で感染する子が出始めているときは、少しようすがおかしいと感じる子どもは、早めに検温して体調のチェックを。
熱が下がったあとでも、のどが痛い時期は、食事に注意が必要です。塩分や酸味が強い、味が濃い食べ物は、のどの潰瘍にしみるのでやめましょう。
薄味のスープ、プリンや牛乳など、のどごしのよいものを与えます。
のどの痛みで食事がまったくとれないときでも、脱水症状にならないよう水分だけはきちんととるように気を付けましょう。
気管支ぜんそく
どんな病気なの?
アレルギー性の病気で、アレルギーの原因物質の刺激などで気道が狭くなり、ヒューヒュー、ゼーゼーという音のする呼吸や、呼吸困難の発作を繰り返し起こします。
原因で多いのはダニやハウスダスト、動物の毛などです。
幼児では、風邪や気管支炎のあとに気道に炎症が残り、やがて本格的な気管支ぜんそくに移行していくこともあります。
どんな症状?
発作が起きるとヒューヒュー、ゼーゼーと呼吸のたびに音がして、苦しそうに肩で息をするようになります。
軽い発作は安静にしていれば次第におさまりますが、強い発作が起きたときは、突然呼吸困難に陥り、命に関わることもあります。
園での対応はどうする?
発作が起きて苦しそうなときは、無理に横にせず、上体を起こしてラクな姿勢で休ませ、ようすを見ながら水分を与えます。
薬については、飲み薬程度であれば保護者の依頼で薬を与えても問題ありません。
吸収剤などの特殊な薬は無理に園で投薬せず、かかりつけの病院を受診しましょう。
保護者には、専門の医療機関を受診してもらい、激しい運動や動物とのふれあいなど、園の活動でどのような注意が必要か、医師の確認を伝えてもらい、守るようにしましょう。
ぜんそく発作をおこしやすい条件・環境
ハウスダストなどのアレルギーの原因物質のほかにも、ぜんそくを悪化させやすい条件や環境があります。
発作の起きやすい、いくつかのパターンを知っておきましょう。